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確定申告の季節

category: 税務署その他
第87号(2017年02月01日発行分)
元国税調査官・税理士
黒崎 俊夫

書店に「確定申告のコーナー」が設けられると、確定申告の季節の到来を感じる。
以前のこの法人便りにも書いたと思うが、一般の人に対し申告指導等を行うことは決して嫌いではなく、税務調査などに比べるとむしろ好きな業務だった。しかし、この時期特有の慌ただしさや猥雑さなど、当時の私を含め全職員にとって憂鬱な時期であることは間違いない。

確定申告の会場にいる職員がすべて税法に精通する人間だと思ったら大間違いである。通常、職員は皆ジャンパーを着用しており、そのジャンパーの色によって例えば青色は所得税の職員、赤は資産税(譲渡所得、贈与税)、緑は法人課税からの応援職員、そして白は派遣社員などに区分けされる。特に白は本来の職員でなくこの時期だけの派遣なので、税法の講習を受けてきているとは言え、専門知識はないのでパソコンの入力操作の指導を専門に行っているはずだ。従って白に入力操作以外の質問をしても無駄であるし、白の入力指導を受けた申告書は、漏れがないか注意した方がいい。また、特に譲渡所得関係は、専門の赤ジャンパーに確認するべきである。他の色の職員にも譲渡関係は、赤に聞くよう言っているのだが、知ったかぶりをして専門外の分野の指導を平気でする職員もいる。「……と思う」などと断定的な言い方ができない職員の回答は疑ってかかった方がいい。

確定申告書の3割は3月13日以降に提出される。期限ぎりぎりになって作成するのか、税理士に慌てて依頼するのか知らないが、早期に提出するのに越したことはない。当局も早期提出を盛んに呼びかけている。
申告書は提出されると、まず管理運営部門というところで所定の入力作業があり、その後個人課税部門や資産課税部門に配布され、内容の簡易なチェックを行うが(記載漏れはないか、必要書類の添付はあるかなど)、早期提出が望ましいのは、このチェックの段階で、例えば計算誤りがあるとか、必要書類が不備であると、納税者に直ちに連絡をし、必要に応じて「訂正申告」と言って3月15日までの期限内に申告書の出し直しによる是正処理が可能であるからである。期限内であるから延滞税などの付帯税の負担もない。場合によっては申告書自体の取消し、撤回も可能であるが、3月以降提出分については、その時間の余裕がなく、また期限を過ぎると、申告事績入力の訂正ができないので、そういった裏の処理がしにくくなるのである。

特に金額の大きい資産税関係でのミスは税額に響きこれは痛い。資産税関係でよくあるのが、①申告書の2通出し(例、父母からの贈与を各々別々に出す)。②過去の相続時精算課税適用者が同じ贈与者から暦年課税の贈与税申告を出す誤り。③住宅資金贈与等特例の明らかな要件不具備。等であり、自分自身の経験から期限内是正で救った例もかなりある。

これをお読みになっている方で実際に税務署に行き申告書を作成する方がどれくらいいるのか不明だが、現場で職員に親切にされる納税者の要件を思いつくままランダムに記すと、①医療費控除の領収書の集計を事前に行っておくこと。②売買契約書等原本の提出ができない書類は事前にコピーを取っておくこと。③昨年の申告書の控えを持参すること。④疑問点は早めに率直に質問すること。最悪なのは作成完了間際になって、この経費も認めてほしいなどと切り出すこと。⑤複雑な説明についてメモを取ってくれること。⑥扶養控除の対象となる親や子供の生年月日などはすぐ答えられること。⑦路線価図を見て自分の土地の位置を特定できずに職員をイライラさせないこと。⑧時間をかけて馬鹿丁寧に氏名等を書かないこと。⑧印鑑を忘れないこと。還付先銀行口座番号はあらかじめ控えておくこと。などだが、以上のことに一つでも引っかかると、それだけ時間がかかるし、二度手間になる。スムーズにいけば、職員も気持ちがよく、経費の一つ二つ余計に認めてくれるかもしれない。

私自身6年前に退職し、これらは6年以上前の話であるが、大方変わっていないと思う。

税務総合戦略室便り 第87号(2017年02月01日発行分)に掲載

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