税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第87号 >  情報の選択と使い方 ~安易な節税対策のリスクについて貸倒損失(全額回収不能とは③)~

情報の選択と使い方 
~安易な節税対策のリスクについて
貸倒損失(全額回収不能とは③)~

第87号(2017年02月01日発行分)

執筆者12

前号では、長期未回収債権の貸倒損失の取扱いについて紹介しました。今号では、C社に対する売掛金と元従業員D氏に対する貸付金を例に法人税基本通達9-6-2「回収不能の金銭債権の貸倒れ」について検討したいと思います。

A社が計上した貸倒損失

C社に対する売掛金は、今期商品を販売したが、社長と連絡が取れなくなり未回収となったものです。元従業員D氏に対する貸付金は、3年前に貸し付けたが、返済しないまま退職して未回収となったものです。両債権とも「法律上の貸倒れ」に該当する事実はないものとします。そのため、法人税基本通達9-6-1の適用はありません。また、C社との最後の取引から1年以上経過しておらず、D氏に対する債権は貸付金であり、売掛債権ではないため、法人税基本通達9-6-3の「形式上の貸倒れ」には該当しません。
したがって、両債権については、法人税基本通達9-6-2に該当するかどうかを検討することになります。

回収不能の金銭債権の貸倒れとは

法人税基本通達9-6-2には、次のように記載されています。

法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。
(注)保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

ポイントとしては、①全額回収できないことが明らかであること②損金経理をしていること③担保がある場合、保証人がいる場合の取扱いの3つを挙げることができます。

全額回収できないことが明らかであること

1つ目のポイントはさらに2つにわけることができます。①回収不能かどうかの判断材料は何か②回収不能額が全額であることです。

①判断材料

法人税基本通達では、判断材料として、「債務者の資産状況、支払能力等からみて……」と記載されているのみです。判断材料の具体例として『法人税基本通達逐条解説』に次のような事実が記載されています。

(判断材料の具体例)
債務者について破産、強制和議、強制執行、整理、死亡、行方不明、債務超過、天災事故、経済事情の急変等の事実

 

さらに『同解説』では、判断材料を限定列挙したものではなく、回収不能かどうかの判断は弾力的に行うべきとしています。最高裁判決でも回収不能である事実が客観的に明らかであり、個別の事案に応じて社会通念に従った総合的な判断をする必要があるとされています。つまり事実認定が重要であり、いかに回収不能であるかどうかの証拠を積み上げることができるかがポイントとなります。以前も記載したとおり、事実認定を苦手とする調査官が多い傾向があるため、納税者側でしっかり準備すれば調査官が納税者側の主張を覆すことは難しくなります。

②回収不能額が全額であること

債権の全額が回収不能である必要があります。例えば、C社の売掛金250万円のうち200万円だけ回収不能という処理は認められません。ただし、実務上債権の一部だけを貸倒れ処理する誤りはあまり多くありません。余談ですが、債権の一部のみを貸倒損失計上するという誤りの処理については、税理士試験の法人税法の計算問題でよく出る内容です。あくまでも争いになるには、①の判断材料が適正かどうかになります。

(次号に続く)

税務総合戦略室便り 第87号(2017年02月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP