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情報の選択と使い方 
~安易な節税対策のリスクについて
貸倒損失(長期未回収債権の取扱い②)~

第86号(2017年01月01日発行分)

執筆者12

前号からA社が計上した貸倒損失について具体的にどのように調査が行われるかを紹介しています。今号では「長期未回収債権の貸倒損失」について調査官とどういうやり取りが行われるかを紹介します。

B社に対する貸倒損失について

B社に対する債権に係る貸倒損失に関する事実関係は次のとおりです。

  • 10年前に商品を1千万円で販売した際の未回収の売掛金
  • 取引は10年前に1度だけ
  • 取引の翌月に500万円の支払いがあったがその後業績悪化
  • B社は8年前に倒産し、会社や社長とも連絡が取れない
  • A社社長の判断で8年前に回収することを諦め、督促等の行動なし
  • B社に対して債権放棄の通知は行っていない
  • 平成28年3月31日に貸倒損失500万円を計上した

実地調査

前号で紹介したとおり、準備調査において調査官はB社が少なくても7年以上前に倒産している事実を把握しています。つまり、貸倒損失の計上時期が平成28年3月期ではないとの疑問を持って調査に臨んできます。
 上記の事実関係から考えると、8年前に倒産し、回収することを諦めて督促の行動も全くないことから、8年前が適正な計上時期といえると思います。もちろん他の事実関係があれば結果は変わってきます。

調査官のタイプ別調査手法

では次のタイプの調査官について具体的なやり取りをみていきます。

・直球勝負タイプ

自分が把握している事実を明らかにし、疑問点をダイレクトにぶつけてきます。真っ向勝負を挑んでくるため、この直球勝負タイプの調査官は勝負が早くつくことが多いです。
今回の場合には、「こちらで調べたところB社は7年以上前に倒産しており、現在の場所に会社はありませんでした。なぜ28年3月期に貸倒損失に計上したのですか?」とストレートに聞いてきます。会社側がびっくりしてとっさに「回収できないと判断したので……」と回答すると、矢継ぎ早に「7年以上前にわかっていたのでは?」「督促は?」「社長との連絡は?」「貸倒損失計上を決定したのは誰?」などの容赦ないボールが投げ込まれ、簡単に追いこまれます。完全に調査官のペースとなり、会社側は「……(沈黙)」「8年前から督促もしておらず、回収は諦めていた」となり、「計上時期が異なりますね」とあっという間にゲームセット。

・変化球タイプ

自分が把握していることもあえて質問し、ゆっくり追い込んできます。もちろん目指すゴールは同じですが、このタイプの場合は、会社側が油断してしまうことが多いです。調査官は何もわかってないと思い「最近まで督促していた」「28年3月にもう払えないと言われた」などの適当な発言をしてしまいます。この変化球タイプの調査官はこの油断を待っています。相手に事実と異なる発言があった途端にポーカーフェイスで「私が把握している事実と違います」「社長とは連絡はとれないはず」「証拠を出してください」など直球勝負タイプと同じくらいのストレートを投げてきます。この時点で勝負ありです。直球勝負タイプより多少時間はかかりますが、結果は同じです。

・最近のタイプ

ちなみに最近の調査官は、直球勝負の人は少なく、一見変化球タイプかなと思ったら、自分でゴールが見えてなく、質問の意図もよくわからない人が多いです。特にその場で疑問点を言わずに「持ち帰ります」とだけ言って1ヶ月音沙汰なしということもあります。
 ゴールを設定し、どういう事実関係を掴み、証拠資料が必要となるのかを自分の頭の中で構築できる調査官がとても少ない気がします。個人的には税法の知識よりも重要だと思います。調査官の生産性が向上し、調査の早期決着が実現することを望みます。

税務総合戦略室便り 第86号(2017年01月01日発行分)に掲載

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