税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第85号 >  国際課税の話(その6)

国際課税の話(その6)

category: 国際税務
第85号(2016年12月01日発行分)

立石 信一郎

今回は、国税庁から10月に様々な報道発表がされていますので、その中から、国際課税に関係するものについてご紹介したいと思います。

国外財産調書の提出状況について(平成27年分)

「国外財産調書」制度は、国外財産の保有が増加傾向にある中で、国外財産に係る所得税や相続税の適正な課税の確保を図ることを目的として、国外財産を保有する者からその保有する国外財産に係る調書の提出を求める制度として、平成26年1月から施行されています。
 この制度においては、その年の12月31日において、5千万円を超える国外財産を有する居住者は、翌年3月15日までに財産の種類、金額等を記載した「国外財産調書」を税務署長に提出しなければなりません。なお、調書が適正に提出されるよう、①国外財産に係る所得税や相続税の申告漏れが生じた場合に、調書の提出の有無により、加算税を軽減したり、加重したりするとともに、②正当な理由なく期限内に提出しなかったり、虚偽の記載を行ったりした場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を課することとしています。
 平成27年分(平成27年12月31日分)の提出状況は、総提出件数が8893件で、総財産額は3兆1643億円となっており、平成26年分と比較すると、それぞれ108・7%と101・6%と微増に留まっています。なお、財産の種類としては、有価証券(48・4%)と預貯金(19・2%)で約70%近くを占めています。
 提出義務があると見込まれながら未提出であるものや調書に不備があったものに対しては、文書照会が行われ、回答がないものについては解明することとしているようです。
 現在のところ、この「国外財産調書」に関わる否認事例は公表されていませんが、税務当局は、効果的・効率的な税務行政という観点から、見せしめの事件を公表することにより、他の多くの人が同じような誤りを起こさないようにする、「一罰百戒」を旨としていることから、懲役等を課すのに適当な大型の国外財産に関連する脱税事件を求めているのではないかと思います。

所得税及び消費税調査等の状況 について(平成27年度分)
―いわゆる「富裕層」への対応

近年、税務当局は、有価証券、不動産等の大口所有者や経常的な所得が特に高額な、いわゆる「富裕層」をターゲットに、「プロジェクトチーム」を設けるなどして積極的に調査に取り組んできています。
 平成27年度(平成27年7月から平成28年6月まで)の「富裕層」に対する調査状況は、4377件の調査を実施し、3480件から、516億円の申告漏れ所得を把握し、120億円の税額を追徴しており、1件当たりの申告漏れ所得は1179万円、追徴税額は273万円となっています。これは過去最高の数字だそうです。
 このうち、海外投資などを行っている「富裕層」に関しては、168億円の申告漏れ所得を把握し、1件当たりの申告漏れ所得は2970万円となっており、海外を利用している「富裕層」の申告漏れは多額になる傾向があるようです。
しかしながら、税務当局から、繰り返し、「富裕層」や「超富裕層」に対する調査体制を整え、積極的に調査に取り組んでいるとのアナウンスがあるものの、この調査結果は、高額・悪質な事件という印象からは程遠く、それほどインパクトがないように感じられます。

「国際戦略トータルプラン」の公表

国税庁は、10月25日に、国税庁における国際課税への取組の現状と今後の方向性を取りまとめた、「国際戦略トータルプラン」を公表しました。
「国際戦略トータルプラン」は、①情報リソースの充実(情報収集・活用の強化)、②調査マンパワーの充実(専門体制の整備・拡充)、及び③グローバルネットワークの強化(外国当局との協調等)を3本の柱としており、これまでに打ち出してきた様々な施策を、国外財産調書等の情報の収集・活用という情報面、調査体制の整備等の体制面及び情報交換等の国際協力面から、整理したものとなっており、国税庁のホームページから、34ページにわたる資料を入手することができます。

税務総合戦略室便り 第85号(2016年12月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP