オーナー会社の株式すなわち非上場株式を相続や売買する場合の評価について、今更感はありますが、今回は、改めて本問題に焦点をあててみます。チョットだけですが……。
この問題を取り上げたいと思ったのは、コンサルや質問でクローズアップされることがよくあったからです。
相続税の財産評価をする場合には、いわゆる評価通達を使用します。
更に、法人税における非上場株式の評価損益や個人が法人に株式を売却した場合の「低廉譲渡」の判断基準とする価格についても、この評価通達を利用した通達がされています。
このようなことから、一般の売買においても、この通達が利用されるのは当然のことといえる訳です。
評価通達では、株主の議決権割合と同族関係者としての支配力にウェイトをおいて、支配株主は原則的評価方式で高く評価し、その他の株主は配当還元方式で安く評価することになっています。
以上のように、一定の要素から会社の支配力を判定し、高い評価と安い評価を決めるやり方は、売買の当事者の一方が支配株主で他方がその他の株主である場合に、それぞれの立場からみて、時価が異なるという問題が顕在化します。
このことについては、私は勿論のこと、悩んだ経験のある税理士は多い筈です。
会社オーナーの持株数や議決権割合を減らすために従業員持株会が設立される場合もあります。本来は、従業員のモチベーションと資産の育成のためにあるべきものですが、民主的な運営がなされず、会社オーナーによってコントロールされているような場合には、実質は同族関係者の株式であると認定されるリスクがあるでしょう。
また、他人に株を持たせて議決権割合を低くするスキームも見受けられます。
ここで、この問題に関してよく引用される国税不服審判所の裁決を紹介します。
相続したA社の株式の評価について、配当還元方式で評価し相続税の申告をしたところ、A社の株主であるB社は評価通達で規定する同族関係者に当たるから原則的評価方式で評価するべきであるとして更正処分をした税務署と、申告した相続人とが争った事例です。(国税不服審判所の裁決は、裁判所の前段階の判断になります。)
以上、裁決事例の文章を一部引用したので、読みづらいのですが、要点は伝わったと思います。
これはレアケースではありますが、私自身も注意していきたいものです。
税務総合戦略室便り 第85号(2016年12月01日発行分)に掲載
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