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オーナー会社の株式評価を改めて考える

category: 自社株
第85号(2016年12月01日発行分)

執筆者6

オーナー会社の株式すなわち非上場株式を相続や売買する場合の評価について、今更感はありますが、今回は、改めて本問題に焦点をあててみます。チョットだけですが……。
 この問題を取り上げたいと思ったのは、コンサルや質問でクローズアップされることがよくあったからです。

評価通達を売買に利用

相続税の財産評価をする場合には、いわゆる評価通達を使用します。
 更に、法人税における非上場株式の評価損益や個人が法人に株式を売却した場合の「低廉譲渡」の判断基準とする価格についても、この評価通達を利用した通達がされています。
 このようなことから、一般の売買においても、この通達が利用されるのは当然のことといえる訳です。

評価通達では、株主の議決権割合と同族関係者としての支配力にウェイトをおいて、支配株主は原則的評価方式で高く評価し、その他の株主は配当還元方式で安く評価することになっています。

支配株主とその他の株主との間の売買に解けぬ問題が

以上のように、一定の要素から会社の支配力を判定し、高い評価と安い評価を決めるやり方は、売買の当事者の一方が支配株主で他方がその他の株主である場合に、それぞれの立場からみて、時価が異なるという問題が顕在化します。
 このことについては、私は勿論のこと、悩んだ経験のある税理士は多い筈です。

相続に備えて形式的に支配株主で ないようにする対策をとる納税者も

会社オーナーの持株数や議決権割合を減らすために従業員持株会が設立される場合もあります。本来は、従業員のモチベーションと資産の育成のためにあるべきものですが、民主的な運営がなされず、会社オーナーによってコントロールされているような場合には、実質は同族関係者の株式であると認定されるリスクがあるでしょう。
 また、他人に株を持たせて議決権割合を低くするスキームも見受けられます。
 ここで、この問題に関してよく引用される国税不服審判所の裁決を紹介します。

事案の概要

相続したA社の株式の評価について、配当還元方式で評価し相続税の申告をしたところ、A社の株主であるB社は評価通達で規定する同族関係者に当たるから原則的評価方式で評価するべきであるとして更正処分をした税務署と、申告した相続人とが争った事例です。(国税不服審判所の裁決は、裁判所の前段階の判断になります。)

事案のポイント

  • ①A社の社長であった被相続人とB社の社長とは他人であるが、知合いであること
  • ②被相続人は、生前にA社の株式の一部をB社に売却した結果、議決権数から支配株主ではなくなったこと
  • ③B社の購入資金は、被相続人が社長であるC社が融通したこと
  • ④B社の株主は、A社の役員等であること

裁決(平成23年9月28日)

  • ①被相続人は、A社の株式の議決権割合を15%未満にし評価方法を配当還元方式にするために、同人ら親族が出資者になっていないB社に売却したと認められる。
  • ②その他総合勘案すれば、B社は、その設立目的、出資者、活動等のいずれの点からみても、A社の社長であった被相続人ら創業家の強い支配下にあり、B社の出資者は、B社の意思決定をいずれも、被相続人らA社の創業者一族の意思に委ねていたものと認められる。
    そのことから、本件相続人(審査請求人)は、法人税法施行令第4条第6項の規定により、B社の株主総会における全議決権を実質的に有し、唯一の出資者であると認められるから、同上第3項の規定により、B社を支配していることとなる。その結果、同上第2項によりB社はA社と特殊の関係にある法人に該当し、評価通達188の(1)に定める同族関係者に該当すると認められる。

実質判断されるリスクに注意

以上、裁決事例の文章を一部引用したので、読みづらいのですが、要点は伝わったと思います。
これはレアケースではありますが、私自身も注意していきたいものです。

税務総合戦略室便り 第85号(2016年12月01日発行分)に掲載

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