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情報の選択と使い方 
~安易な節税対策のリスクについて
貸倒損失(長期未回収債権の取扱い)~

第85号(2016年12月01日発行分)

執筆者12

今号からA社が計上した貸倒損失について具体的にどのように調査が行われ、注意すべき事項は何かについて紹介します。

A社が計上した貸倒損失

まずは、10年前に発生したB社に対する売掛金500万円について検討します。
 これは、長期間未回収で残っている売掛金を貸倒損失として損金算入した場合の計上時期が適正かどうかがポイントとなります。

実際の税務調査において

税務調査が行われた場合には、調査官はどのように調査するかを紹介します。調査官の視点を理解することは税務調査対策として有効だと思います。
(前提)事実関係は次のとおりであったとします。

  • 10年前に商品を1千万円で販売し  た際の未回収の売掛金
  • 取引は10年前に1度だけ
  • 取引の翌月に500万円の支払い があったが、その後業績悪化
  • B社は8年前に倒産し、会社や社 長とも連絡が取れない
  • A社社長の判断で8年前に回収す ることを諦め、督促等の行動なし
  • B社に対して債権放棄の通知は行っていない

調査官がこの事実関係のすべてを把握した場合には、B社に対する売掛金に係る貸倒損失は、平成28年3月期の損金の額には算入されない可能性が高いと考えます。しかし、正確な事実認定ができるかどうかは調査官の能力によって大きく変わります。したがって、この事実関係をどこまで把握できるかで調査の結果は変わってきます。

準備調査での把握

B社の売掛金については、準備調査をしっかり行うことで実地調査前にある程度の仮説を持って調査に臨むことができます。

①過去3年分の決算書比較

準備調査ではまず過去3年分の決算数字の動きを確認します。金額の変動が大きい科目に着目するのが一般的ですが、金額が全く動いていない場合にも着目することもあります。売掛金については、決算書の金額の変動を見ているだけではなかなか違和感を持つことはできないと思います。

②申告書の内訳書確認

次に確定申告書に添付している内訳書を過去3年分比較します。内訳書には各勘定科目の明細が記載されており、取引先の住所等も記載されているため、税務調査を実施する場合には有用な情報となります。
 B社の売掛金が過去3年間500万円のまま変動していないことは簡単にわかります。

③7年前の申告書まで遡って確認

税務署には過去7年分の申告書が保存されています。すぐに確認することができるため、B社の売掛金が7年前から500万円のまま残っていることがわかります。ただし、売掛金がいつ発生したかはわかりません。

④B社の申告状況確認

次に国税庁のシステムを使ってB社の申告状況を検索します。検索することにより直近3年分も申告状況の把握が可能です。休業中・解散している等の情報も把握することができます。
 この段階でB社に対する売掛金は7年以上前に発生し、支払いは一切ないこと、すでに会社として稼働していない可能性が高いことの想定が可能となります。
 さらに時間がある場合には、B社の所轄の税務署に問合せをし、保存してある資料を確認することもあります。その場合には、おそらくB社が少なくても7年間は無申告状態であることや代表者の情報等さらに有用な情報を得ることができます。
 ここまで、準備調査した結果、調査官は「B社は7年以上前に倒産し、貸倒損失計上時期が適正ではない」との仮説を立てて実地調査に臨みます。

税務総合戦略室便り 第85号(2016年12月01日発行分)に掲載

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