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情報の選択と使い方 
~安易な節税対策のリスクについて(税務調査編)~

第84号(2016年11月01日発行分)

執筆者12

前号において、貸倒損失に関する法人税法上の規定又は通達を紹介しました。今号から、A社が平成28年3月期に計上した貸倒損失について、税務調査で確認される事項及び注意点を紹介します。

A社が計上した貸倒損失

調査項目としての貸倒損失

A社のように安易に貸倒損失を計上して利益を圧縮する会社が多いですが、実際に税務調査において、貸倒損失は調査項目としてどのくらい注目されるのでしょうか。  金額にもよりますが、貸倒損失の計上があった場合には、ほぼ100%検討されると思って間違いありません。調査官は貸倒損失に限らず、臨時的な費用又は損失については、特に注目します。他には、固定資産売却損、固定資産評価損、雑損失等が該当します。その中でも貸倒損失は特に注目される可能性が高いと思います。その理由は、会社としてキャッシュアウトしないため、会社が容易に計上できると判断し、恣意性が働いている可能性が高いためです。  では、実際に検討された場合において、否認される可能性はどのくらいあるのでしょうか。前号にも記載しましたが、ポイントは①貸倒れの事実があるかどうか②貸倒れが生じた時期が適正かどうかであり、事実認定の問題となります。そのため、調査官の調査能力により事実認定の精度に差が生じ、結果が大きく変わる可能性が高くなります。結果として貸倒損失に関する訴訟も多く提起されることになります。

調査官の準備

準備調査については、以前記載しましたが、ここでも調査官によって差が出ます。確定申告書の内訳書に貸倒損失の相手先等が記載されている場合に、調査官は当日までにどのような準備をするか紹介します。  まず行うのは、相手先の申告状況の確認です。国税庁のシステムで簡単に検索することができるため、多くの調査官が準備調査段階で実施します。検索することにより、「休業中」「稼働中」「無申告」等の状況を把握することができます。例えば、検索した結果、相手先の会社が「稼働中」であった場合には、貸倒れの事実が生じていないのではないかとの想定をすることになります。さらに会社のホームページを検索する等して状況を確認します。  ここまでの準備により一定の仮説をもって調査に臨む場合もありますが、時間がある場合には、さらに詳細に検討する場合もあります。具体的には、相手先の確定申告書を所轄の税務署から取寄せて内容を確認することもあります。さらに場所が近い場合には、現地を確認することもあります。  準備調査をしっかり行うことで、貸倒損失の計上の適否を判定する通達の9-6-1(法律上の貸倒れ)については、準備調査の段階で検証可能だと思います。つまり、相手先の確定申告書を確認することで、法律に基づく債権の切捨てがあったかどうか、債務超過の状態が継続していたかどうかはある程度わかると思います。その場合には、実地調査においては、9-6-2(事実上の貸倒れ)と9-6-3(形式上の貸倒れ)に該当するかどうかを検討することになります。

検討の流れ

調査官が貸倒損失の計上の適否を判定する流れは、次のようになります。

  • ①9-6-1(法律上の貸倒れ)の 事実が生じているか
  • ②9-6-2(事実上の貸倒れ)の 事実が生じているか
  • ③9-6-3(形式上の貸倒れ)の 事実が生じているか
  • ④債権放棄が寄附金に該当するか どうか

次号以降具体的に検討していきます。
(次号に続く)

税務総合戦略室便り 第84号(2016年11月01日発行分)に掲載

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