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役員が分掌変更した場合に支給する退職金の損金算入(後篇)

category: 節税法人税
第83号(2016年10月01日発行分)

執筆者3

中編まで、社長が事業承継のため非常勤の取締役に退いた。その際、退職金を支給することにしたが、資金繰りが苦しいので、3期にわたり分割支給することとした。翌期になって、分割支給の退職金が翌期以降、損金となる退職金として認められるのか心配になった。通達等の取扱いに基づくと原則的には損金とはならないと思われたが、同様の事例の裁判で、東京地裁において分割支給を認める画期的な判決があったところまでお話ししました。その続き、

判決に先立つ審判所の裁決

税務当局の更正処分を不服とする原告会社Ⅹは、審査請求を行い、その中で第二金員は法人税基本通達9-2-28《役員に対する退職金の損金算入時期》ただし書きの規定により、役員退職金を支払った日の属する事業年度で損金に算入できると主張した。
 審判所は、①分掌変更時に第二金員が支払われなかったことは、合理的な理由によるものであると認めるに足りる証拠はなく、法人税基本通達9-2-32《役員の分掌変更等の場合の退職給与》の定めに基づき退職給与として取り扱うことはできないと判断した。
 加えて、②法人税基本通達9-2-28は、実際に退職した役員に対する退職給与の損金算入時期について定めたものであって、本件役員に退職した事実がないのであるから、同通達は適用されないと判断し、納税者側の主張を退けた。平成24年3月27日裁決。
 これを不服として裁判に及んだのであるが、裁判でも争点となったのは、第二金員を支給した年度(平成20年8月期)において損金算入することが可能か否かであった。

東京地裁判決の内容

上記の争点について原告会社は、本件第二金員を支給年度で損金経理した処理は法人税法22条4項の「公正処理基準」に従ったもので、損金算入できると主張。税務当局は審判と同様(通達の示す解釈・適用に基づき)退職金債務が確定したのは19年8月期であるため、損金算入できないと主張した。
 両者の主張に対し裁判所は、役員退職給与をどの事業年度の費用に計上すべきかについては、公正処理基準に従うべきとの判断の枠組みを示した上、法人税基本通達9-2-28ただし書きに依拠した支給年度損金経理処理は、企業が役員退職金を支給する場合に採用する会計処理の一つであることや、相当期間にわたり相当数の企業によって採用されと推認できることを踏まえれば、役員退職金を分割支給する場合における会計処理の一つの方法として確立した会計慣行であると指摘した。
 さらに、中小企業では企業会計原則をはじめとする会計基準よりも、税務会計を基準として会計を行っている場合が多いという実態がある点などを指摘し、そのような中小企業においては、法人税基本通達9-2-28ただし書きに依拠した支給年度損金経理処理は、一般に公正妥当な会計慣行の一つであると判断した。
 その上で、本件第二金員を支給年度で損金経理できると判断しました。

判決のポイント

税務当局は審判と同様に法人税基本通達9-2-28ただし書きは、実際に退職した役員に対する退職給与にのみ適用されるものであり、分掌変更での適用は予定されていないと主張した。
 この主張に対し裁判所は、法人税基本通達9-2-32《役員の分掌変更等の場合の退職給与》も法人税法34条1項にいう退職給与に含まれると解すべきであると指摘し、法人税基本通達9-2-28における「退職した役員」「退職給与」といった文言には、実質的には退職したと同様の事情にあると認められる場合を含むものと解釈すべきであることは明らかであると判断したのです。

今後、分割支給は認められるのか

ケーススタディの退職金の分割支給は東京地裁で争われたのと同様のケースですので、損金経理は認められると思われます。
 裁判事例は、予め退職金の総額が株主総会等で決められ債務が確定しており、かつ、分割支給時期も定められており分割支給の終期が明らかにされているケースでした。
 この点を踏まえて、分割支給を行なえば、翌期以降の損金経理は認められると思われます。

税務総合戦略室便り 第83号(2016年10月01日発行分)に掲載

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