毎月1回発行している会報に原稿を書き始めてから1年以上経過しました。毎月テーマを考えるとき、国税職員時代の自分を振り返っています。在職約10年、退職してもうすぐ2年が経過しますが、「あの調査のときはこう質問すればよかったなあ」「調査能力の高い先輩を見てこんな方法があるのか」等今でも色々思い出します。今後も過去の経験を生かして皆様に少しでも有益な情報を提供できればと思います。
過去数回にわたって申告書の提出から税務調査当日までの流れを各段階に分けて紹介してきました。
今回から、具体的項目についての調査展開、注意点等について紹介します。
今回紹介する内容は以前具体例で紹介した「貸倒損失」の計上の適否です。以前記載したA社の申告内容を基に1つ1つ貸倒損失の計上の適否を検討していきたいと思います。
A社(3月決算)が平成28年3月期の確定申告に計上した貸倒損失の内容は次のとおりです。
4つの債権について貸倒損失を計上しており、計上した理由は、以前記載していますが、その理由が計上の適否を判定する重要な要素となるため、具体的に検討するときに改めて紹介します。
貸倒損失の計上の適否について具体的検討に入る前に、法人税法上の規定、通達について簡単に紹介します。
法人税法上、貸倒損失の計上について別段の定めを設けて具体的に規定したものはありません。法人の有する金銭債権について貸倒れが生じた場合の貸倒損失の計上の適否を判定する法人税法の規定は、法人税法第22条第3項となります。当該規定では、損失が発生したときに損金の額に算入されることが明らかにされています。
ただし、いつ損失(貸倒れ)が発生したかどうかの事実認定は難しいため、その判定の一般的な基準を法人税基本通達9-6-1から9-6-3において明らかにしています。すべての事例が通達でカバーできているわけではありませんが、税務調査においても調査官はこの通達に該当するかどうかを検討することになります。一般的な基準を明らかにしているだけであるため、納税者側と国税側で貸倒損失の計上の適否について争いが比較的多いと思います。貸倒損失に限りませんが、重要なのは「事実認定」であり、正確な「事実認定」ができて初めて法律や通達に当てはめることになります。
法人税基本通達9-6-1から9-6-3の内容をまとめると次のようになります。
(次号につづく)
税務総合戦略室便り 第83号(2016年10月01日発行分)に掲載
お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ
全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。
03-5354-5222