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役員が分掌変更した場合に支給する退職金の損金算入(中篇)

category: 節税法人税
第82号(2016年09月01日発行分)

執筆者3

前篇では、会社の事業承継に際し、代表者が非常勤取締役に退いた時に、法人税法基本通達9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)規定を適用して退職金を支給することにし、その支給方法を3年分割支給としたところまでお話ししました。
 さて、その年度において、法人は分割支給した第一回支払金を支給し経理処理し損金に算入しました。第二回は翌年度に支給、第三回は翌々年度に支給を受けることを株主総会決議により確定しており、支給の都度、支給した金額を退職金(損金)に計上する方針でいましたが、翌年度以降において分割支給される予定の第二回金と第三回金は法人税法上、損金に算入されるのか?非常勤取締役となった元代表者は心配になりました。
 では、法人税法上の取扱はどのようになっているのか。

取扱いのポイント

役員の分掌変更に伴う退職金の支給に関する取扱いについては、法令の規定ではなく、通達(改正前の法人税基本通達9-2-23)により、引き続き在職する場合であっても、特例として、退職金の打ち切り支給が認められていました。が、改正前通達の下、退職金の支給に関し未払金処理を争う事例があった。このため、平成19年3月13日に通達の改正が行われ、その注書に、原則として未払金処理は認めないことが通達において明確化(改正後の法人税基本通達9-2-32)された経緯があります。
 当時の「通達改正の解説」によると、退職給与として認められるのは、法人が実際に支払ったものに限られ、未払金等に計上した額は含まれないこととされたのです。
 また、国税庁ホームページのタックスアンサーを見ると、No・5203には「使用人が役員へ昇格したとき又は分掌変更したときの退職金」が掲載され、その2・役員が分掌変更した場合の退職金では「例えば、次のように、分掌変更によって(省略)、実質的に退職したと同様の事情にある場合に退職金として支給したものは退職金として取り扱うことができます。」との記述があり、続く但し書きには「ただし、未払金に計上したものは、原則として退職金に含まれません。」と書かれています。通達等によると、未払金に計上したものは損金にはならないのです。ところが、注目すべき判決があったのです。

東京地裁判決

分掌変更による役員退職金を分割支給した場合の損金算入時期を巡り、分掌変更があった事業年度ではなく、分割支給された翌事業年度において損金算入できるのか否かが争われた事案で、東京地裁は翌事業年度での損金算入を認める判決を平成27年2月26日に下した。その内容は「実際に分割支給した年度での損金算入を認める」納税者勝訴の注目すべき判決となった。これに対して課税庁側は控訴せず判決は確定しました。どのような裁判であったのか。

(1)事案の概要

  • 原告会社Ⅹの創業者Aは平成19年8月代表取締役を辞し、以後、非常勤取締役となった。役員報酬は月額87万円から40万円に減額した。ⅩはAに対し2億5千万円の退職慰労金を支給することとし、その一部7500万円「本件第一金員」を支払い、平成19年8月期の損金に算入した。
  • 翌事業年度の平成20年8月、ⅩはAに対し退職慰労金の一部として1億2500万円「本件第二金員」を支払い、平成20年8月期の損金に算入した。
  • 平成22年4月、税務調査が開始され、課税庁は(2)の翌事業年度に支払われた「本件第二金員」は退職給与に該当せず、平成20年8月期の損金の額に算入することはできないとし、平成20年8月期に係る法人税の更正処分等を行った。

以上が、事案の概要です。

次回(後編)は、この判決に先立つ審判所の裁決では、分割払いの第二金員を平成20年8月期に退職給与として損金算入することは認められなかったこと。これを不服として裁判に及んだことから始めて、この画期的な判決(確定済み)を受けての、今後の分割支給のあり方についてお話ししたいと思います。

税務総合戦略室便り 第82号(2016年09月01日発行分)に掲載

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