税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第81号 >  税務見聞録~多税に無税~第32回 税務署と揉める4

税務見聞録~多税に無税~第32回 
税務署と揉める4

第81号(2016年08月01日発行分)

執筆者4

税務署と揉めるシリーズ第四弾として『現況調査』について書いてみようと思います。
 現況調査という言葉の意味の多くは不動産用語として用いられるようですが、税務の世界でもよく用いられます。その言葉の通り、現在の状況を調査することです。また、現物確認調査のことでもあり、通常は現況調査と言っています。
 実施するタイミングには大きく分けて二通りあります。

無予告調査による初日

無予告調査とは、言わずと知れたアポなし突撃隊のようなもので、連絡もなく突然に本社、事業所、工場、自宅等に税務職員がやってきて調査の了解を取り最初に行う調査のことです。事務所内の机、金庫、キャビネットなどに保管している資料を確認し必要と思われる資料、ファイルは調査場所に移動して、読切りといって内容を確認します。さらに、パソコンの保存データの確認及び読切りを行います。調査法人の事務所内で一ファイルごと必要かどうかを確認していると時間がかかるため、机の引き出しごとを調査場所へ移動してゆっくりと吟味することもあります。
 パソコンのデータはUSBメモリなどの媒体にコピーして調査用パソコンを使いデータ分析をしたりします。
 無予告調査において、これらのことが初日に実施できれば八割方調査は成功です。確認する資料の読切りには時間がかかる場合がありますので全て終わるのに2日ほどかかることもあります。その後、帳簿調査、反面調査、銀行調査、代表者等への聴き取りというように進展していくのです。

事中現況調査

事中とは、調査連絡をして帳簿調査等を行っていったうえで必要に応じて実施するものです。事中現況調査は無予告調査による現況調査に比べて難しいと思います。机を見せて欲しいというタイミングを考えれば帳簿調査している最中に何もなく机を見せて欲しいと言いづらいですよね。しかし、そこは調査のプロ。口八丁手八丁でなんとか了解を得て実施します。

最近は調査連絡をしても、帳簿等の保管状況が見たいと言って棚とかキャビネットを確認しますが、ただ単に見るだけです。その程度ならする必要性もないと思います。やるだけ無駄です。多分、上司からの指示で帰署後に復命の段階で保管場所は見たかと言われたら、見ましたと言うためだけということです。
 私は事前連絡しても調査初日に最初に行うことは現況調査でした。

最初にも書きましたが、現況調査とは会社にある机、金庫、キャビネット、パソコンなどの内容物を確認することです。当然、何故見る必要があるのかとか、場合によっては令状はあるのかとか言われます。
 「必要な書類は提出するから見せる必要はない」「その書類の保管状況を確認したい」などの押し問答が続くことがあります。また、実際に机などを確認させて、勝手に引出しを開けたとか言って揉めることはしばしばありますね。
 そのため、税務当局はトラブル回避として次のようなことを周知しています。

  • 一.明示の承諾
  • 二.現金等には触れない
  • 三.机金庫は勝手に開けない
  • 四.代表者の立会い

当然のことだと思いますが、なかには出来ない職員もいるようです。
 あと、納税者側は机とか金庫とか見せたくないとして、「机の中を見せてください」といっても、「見せない」の一点張りのこともあります。このような場合は粘り強く説得するということになります。
 調査担当者は、無予告調査で現況調査となる二重のハードルを越えるようなもので、「今日は対応できない」と言われて、「そうですか、わかりました。後日、改めて」と言って帰るようでは失格のようなものですので、必死の説得を重ねるでしょう。

税務調査は早期決着が基本と考えます。そのためには、臨機応変な対応が必要となります。ただ、嫌だということだけでなく、自分なりの許容範囲を設けておくことも必要ではないかと思います。

税務総合戦略室便り 第81号(2016年08月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP