税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第80号 >  元国税調査官のひとりごと 第21回 給与か外注費か

元国税調査官のひとりごと 第21回 
給与か外注費か

category: 法人税
第80号(2016年07月01日発行分)

伊藤 徹也

ここ最近、お客様の相談事例として、法人の支出が、給与にあたるのか、外注費にあたるのかの判断を迫られることが数件続いたので、このことについて書いてみます。
給与と外注費の違いは、「雇用契約」か「請負契約」かの違いなのですが、具体的にどう違うのか解説してみます。

最近の傾向

税務調査においては、昔からよく議論されてきている問題ですが、その判断基準は、必ずしも明確となっておりませんのでいくつかのチェック項目に従って総合的に判断する必要があるのです、
 私見ですが、消費税の導入以来、給与か外注費かの判断は、重要度が増し、さらに平成26年4月の消費税率の引き上げにより、税務調査でも指摘される事例が多くなってきています。
 給与か外注費かの判断により、源泉所得税、消費税の納税額に大きな違いがでてくるためです。当局側も税務調査に際して、消費税の誤りを指摘することは、最重要項目としているのです。
 さらに、マイナンバー制度の導入も、今後の判断に少なからず影響を与えるものと思います。

社会保険への影響

経営者の方が、出来れば外注費にしたいと思うのは、源泉所得税や消費税の納税額もさることながら、社会保険加入の要否にあるのではないでしょうか。
 外注費であれば、社会保険に加入する必要はありませんので、加入を逃れるために、安易に外注費としているケースが数多くあるのです。
 この問題は、大きな社会問題となっていて、今年に入って、厚生労働省と日本年金機構は、保険料を払いたくないがために社会保険への加入を逃れているなどの悪質な業者を刑事告発するための新基準作りをしていると報道されました。

興味深い裁決事例

では、具体的に、給与か外注費かはどの様に判断されるのでしょうか、最近の国税不服審判所の裁決事例に、興味深いものがありました。
 同じ店に働くスナックのホステスが、一人は給与、もう一人は外注費と判断されたのです。両者の大きな違いは、働き方の違いでした。
 給与と判断されたホステスは、日給又は時間給を基本としていて、経営者の管理、指揮命令に服し、空間的、時間的拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務を提供していると判断されました。
これに対して、外注費と判断されたホステスは、受け取る金員を、自分の担当する客売上の50%相当額を基本としていたため、「売掛金の回収責任」も本人にあり経営者との関係において、空間的、時間的な拘束を受けて指揮命令に服していたとは言えないと判断されました。
 給与と判断されたホステスについて、交通費の支給を受けていない上、美容代及び衣装代、客へのプレゼントを自己負担し、時間外に客との食事につきあったりしていると主張するも、美容代や衣装については、接客業務に対する身だしなみの範囲であり、給与所得者でも自己負担しているとされ、プレゼントや、時間外の客との付き合いについても、客観的に見て、支払われる金員に直接関係がないとの理由で、却下されています。

実務的取扱い

経験論ですが、ホステスへの支払いを給与として扱っているケースは、ほとんど見たことがありませんが、実際、税務調査で指摘を受けた場合には、やはり原則通り、給与か外注費かを事実認定により、総合的に判断することになると思います。
 この裁決事例は、スナックのホステスについて判断が下された事例ですが、その他の業種の事業会社においても、同様の考え方で判断されることになります。

対策

外注費として経理している費用を実質的給与と認定されないようにするためには、

  • 請負契約書を作成し、その請負業務内容を明確にすること。
  • 業務に従事するに当たり、空間的、時間的拘束を受けないこと。
  • 業務に従事するに当たり、発注者の指揮命令に服していないこと。
  • 業務に対する損害賠償などのリスクを本人が追うこと。

等を意識して、契約することだと思います。

税務総合戦略室便り 第80号(2016年07月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP