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「名義預金」について考えてみよう2

第80号(2016年07月01日発行分)

執筆者7

贈与は民法上、「あげます」「もらいます」で成立するものであり、また原則書類の作成も不要であるとされております。
 しかも贈与税の時効は6年……(前号の奥様の話によれば、もらったのは確か7年前……)。もちろん贈与でなければ時効は関係なくなります。
 確かに税務署員の言葉を借りれば「もらったら申告するのが当たり前でしょう」ですが、もらっても本当に申告するのを忘れていた、あるいは贈与税の基礎知識がない人だったらどうするのでしょうか。
 税務署員はあくまで税金の側面から考えますから、「贈与税の申告がない」=「贈与ではない」と考えがちですが、果たして税務署員の考え方が正しいか否かです。
 このような贈与を否認するには贈与税の申告がなかったからのみではなく(気持ちはわかりますが)、贈与という行為がなかったということを立証する必要があります。特に近年は税務調査手続きが法定化されたこともあり、より一層納税者の主張に耳を傾け、否認するのであれば、きっちりとした証拠固めを行う傾向にあるようです。
 繰り返しになりますが、贈与という行為は、そもそも民法で規定され、「あげます」「もらいます」という意思表示で成立し、しかも書類は不要でも良いとしています。書類が不要ということは、真実は両者の心の中をのぞけない限りわからないということです。
 とするならば、まず、贈与した側(本事例では夫)が「あげた」と推認するに足りうる証拠があるか、もらった側(本件では妻)が「もらった」と推認するに足りうる証拠があるかということです。
 例えば夫が「あげた」とする7年前の時に痴呆症が著しく進行しており且つ寝たきりであればどうでしょうか。「あげた」という行為からほど遠くなってきます。
 しかしながら、当時は非常に元気であって(調査時に確認した旅行の記念写真より推察)、意思能力はあったようなのですが、今夫に聞こうにも本人は亡くなっているのですから、真実がわからないまま(すなわちグレーゾーン)ということになります。妻に聞いても「もらった」と主張しているため、税務署側はその事実を覆す証拠を積み重ねてくる必要が出てきます。

贈与の時効

まず、「贈与税の申告をしていない」ということは、当然「贈与」という行為がなかったと推認される証拠の一つにはなると思われます。ただし、ここで、注意するのが証拠の一つにはなりますが、「贈与」を否定する証拠の全てではないということです。
 確かに贈与税の申告をしていなかったことは、納税義務の観点から決して好ましいことではありません。しかし、その反面、そのような行為を許さないとするならば、いつまでたっても「贈与」という行為(あくまで真実であるということが前提ですが)が認められず、「法の安定性」が図られません。
 結論としては、贈与税の時効は6年のため、もし本当に本件が7年前に贈与されていれば、贈与税の申告は不要ですし、当然ながら相続税の修正申告は不要であることはいうまでもありません。妻としては、贈与税の申告をしていなかったものは悪いと素直に反省するのは大切ですが、その為に相続税の修正申告をすることとは別問題ととらえなければなりません。

証拠収集

税務署としては、次のステップとしてもらったと主張する妻にその時の状況を詳細に聞くことになると思われます。例えば、その時の預金の出し入れを行った者、届け出印鑑の保管状況、通帳の管理状況、当然ながら口頭での聴き取りでは足りず、これらの裏付けを取らなければならないものと思われます。その際、これら全てを夫が行っており、妻が知りえる状況になかったということになれば、グレーがより黒に近くなってくるのです。

結び

名義預金は永遠のテーマです。安易に「全て申告する」「全て申告しない」ではなく、申告すべきもの、しなくても良いものの線引きをきっちりすることが大切であると思います。

税務総合戦略室便り 第80号(2016年07月01日発行分)に掲載

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