税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第80号 >  国際課税の話(その1)

国際課税の話(その1)

第80号(2016年07月01日発行分)

立石 信一郎

前号で自己紹介をさせていただきましたが、今後自分の専門分野でもある国際課税を中心に、自分が経験してきた最前線の話しや最新のトピックなどについて、自分の感想も交え話しをさせていただきたいと思います。

国際課税との出会い

1979年(昭和54年)から、当初配置の税務署において法人税の調査に4年間従事しましたが、4年目の年は担当していた法人税のゼミを中心に幅広く税法等を学ぶ、約6ヶ月の国税専門官専科研修を終えた後、選抜試験に合格し国際税務、国際会計、貿易実務等を学ぶ、約3ヶ月の国際租税セミナー一般コースという研修を受講しました。
 その国際租税セミナーという研修が国際課税との初めての出会いでしたが、まだ国際課税が国税の職場においてマイナーな分野であり、自分自身もその分野を歩いていくことになるとは思っていませんでした。研修を受講するに当たり、税務大学校から携行資料として、税務署に配付されている「租税条約集」を持参するようにとの指示がありましたが、自分がいた郊外の税務署ではその存在自体さえ知っている人がおらず、皆大騒ぎで探し回り、共通キャビネの隅にひっそり1冊大事に保管されているのを見つけだしたくらいでした。
 自分の運命を大きく変えたのは、4年間の税務署勤務からの初めての人事異動で、国税庁の国税審議官室という部署へ異動したことでした。国税庁が、各部署に散らばっていた国際課税関係の事務を集約するために設置した部署で、まだ設置されて2年目の時期でしたが、国税審議官をトップに7名だけの人員で、外国の税務当局との課税問題について協議や、OECD等の国際会議への対応などを行っていました。ただ、国税庁内部ですら何をやっている部署かあまり認知されていませんでした。
 その後、国際課税の重要性が徐々に高まり、現在では、国際会議等の国際協力を担当する国際業務課と外国の税務当局との協議を担当する相互協議室に分かれ、人員も全体で50~60名ほどに拡充されています。

移転価格税制との出会い

当時のその部署の大きな役割は、新聞にも大きく取り上げられていましたが、米国の税務当局である、内国歳入庁(Internal Revenue Service … IRS)が日本のトヨタ、日産などの自動車会社の米国子会社に対して、数千億円規模の移転価格課税を行う恐れが顕在化し、この問題について対応することでした。
 その当時にはまだ日本に移転価格税制は導入されておらず、その後も、米国内国歳入庁が家電やオートバイを扱う会社等に対して、移転価格に係る税務調査を積極的に実施していたため、その対抗措置などとして1986年(昭和61年)に日本に移転価格税制が導入されました。

米国による移転価格課税について

移転価格課税は、国を跨ぐ関係会社間の取引による利益の移転に対処するための税制ですが、米国内国歳入庁は、日本の自動車会社であるトヨタなどが、その製造した自動車を、米国の販売子会社である米国トヨタに販売する価格が高すぎる、すなわちその結果として米国トヨタの自動車の購入価格が高くなり、利益が過少となっていると考えていました。
 しかしながら、米国内国歳入庁が自動車会社に対して移転価格調査に着手した端緒は、現在ではとても考えられないことが原因でした。輸入関税は、輸入する物品等の価格に関税率を乗じて算出しますが、当初は、米国の関税当局がこの取引に着目し、米国トヨタなどがトヨタなどから輸入している自動車の輸入価格が安く、関税が過少となっているのではないかという観点から調査を実施しました。
 結果として、関税は問題とはなりませんでしたが、その時の関税当局の資料が内国歳入庁に引き渡され、まったく逆の観点から移転価格調査を受けることになったものでした。

次号について

米国内国歳入庁による移転価格課税が、数千億円規模という巨額なものとなる恐れがあった原因には、米国独特の税制や執行体制の問題があり、次回はその点から話しを始めたいと思います。

税務総合戦略室便り 第80号(2016年07月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP