前号までに申告書提出から準備調査までを書いてきましたが、いよいよ税務調査当日となりました。税務調査を経験したことがある人は、何とも言えない緊張感を味わったのではないかと思います。現職時代を振り返ってみると、調査経験が少ないときは、税務調査初日は「どんな社長かな……」と緊張し、準備調査で特に問題がなさそうな会社に行く場合には、「何もなかったらどうしよう……」と思いながら、会社に向かっていました。
会社に訪問するいわゆる「実地調査」は、準備調査で立てた「仮説」を「検証」する作業の第一段階だと考えています。最も重要な作業であり、調査官の能力次第で大きく結果が変わることは言うまでもありません。
実地調査は、通常の税務署の調査では1~2日が最も多く、規模の大きい会社の場合でも最大で3日程度です。ちなみに国税局の調査部が実施する一般的な実地調査は約1か月会社に訪問します。
実際に会社で行う実地調査当日の流れは次のようになります。
簡単に内容を説明すると、
です。
以下、それぞれの内容について、もう少し詳しくみていきます。
概況聴取は、税務調査の初日に必ず行われます。会社の概況を主に社長からヒアリングします。概況聴取で聞かれる主な項目は次のとおりです。
現職時代に概況聴取の重要性を上司から指導され、準備調査から可能な範囲で会社・製品・業界のことを調べ、当日は時間をかけて話を聞くようにしていました。話を聞きながら、自分の立てた「仮説」を修正し、調査項目の絞込作業を行っていました。
退職した現在も、お客様からヒアリングを行うときは、税務調査のヒアリングと同様にじっくり話を聞くことでポイントを見つけるように心掛けています。
最近の税務調査における調査官の傾向を見ると、全体としてコミュニケーションが苦手な調査官が多く、特に概況聴取が上手くできない調査官が多いと思います。調査官によっては、ほとんど概況聴取もしないで総勘定元帳のページをめくり、付箋を貼りまくる人もいます。そんな人を見るたびに「どんな会社か」「どんな書類があるか」等を理解しないで何を見るのかと心配になります。
反対にコミュニケーション能力が高い調査官は、雑談を交えながら、会社の概況だけでなく社長の性格まで把握し、今後の調査展開に生かしていきます。どちらの調査官が会社にとって手強いかは言うまでもありません。
次号以降で概況聴取後の実地調査の流れについて紹介します。
(次号に続く)
税務総合戦略室便り 第80号(2016年07月01日発行分)に掲載
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