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情報の選択と使い方 
~安易な節税対策のリスクについて(②貸倒損失その4)~

第79号(2016年06月01日発行分)

執筆者12

貸倒損失というタイトルをつけておきながら、なかなか内容に入りませんが、今号では、前号の続きとして税務調査に来る前に調査官はどのような準備をしているかについて紹介したいと思います。

申告書提出から税務調査までの流れ

税務調査は、準備調査で「仮説」を立て、実地調査で「検証」することで完結すると考えていますので、いかに数多くの質が高い「仮説」を立てることができるのかが重要だと考えています。もちろん「検証」する能力があって初めて完結することは言うまでもありません。

準備調査とは

税務調査を受けた経験がある人は、調査官がファイルを持っていたと思います。そのファイルに何があるかというと、準備調査した資料が入っています。もちろん見せてはくれませんが……。
 調査官はいったいどんな視点で準備をしているのでしょうか。基本的な準備調査事項は次のとおりです。

  • ①会社概況の把握
  • ②決算書・申告書分析
  • ③過去の調査事績分析
  • ④資料せん分析

①会社概況の把握

まず「どんな会社か」を把握するのがスタートです。主な情報源は会社のホームページが一番多いと思います。もちろんホームページがない会社もあると思います。その場合には、過去の税務調査で入手した情報から会社の概況(業種・沿革・主力商品等)を把握することになります。
 調査初日に調査官が会社の概況を聞くと思いますが、その際に準備調査をしっかりしている調査官はある程度の予備知識が入っているため、深度ある概況聴取を行うことが可能となります。ただし、ベテラン調査官の中には、わざと何も知らないふりをして社長に色々話をさせることにより、後々有効となる情報を引き出す調査官もいますので、しゃべりすぎには注意しましょう。

②決算書・申告書分析

準備調査のメインとなるのが、決算書と申告書の分析です。一般的には、過去3期分の決算書の数字を比較しながら、違和感のある項目をピックアップします。もちろん過去との比較は多くの会計事務所でも分析していると思います。調査官は単純に数値の動きだけを見ているのではなく、勘定科目特有の否認項目と業種等を加味して色々想定します。

③過去の調査事績分析

過去の調査事績を分析することも重要となります。理由は、多くの会社が同じ不正・誤りを繰り返すからです。私の経験でも一度税務調査で指摘を受けた項目について、その場では是正しますが、角度を変えて同じことを繰り返す傾向があると思います。そのため、調査官は必ず過去の調査事績を確認しています。また、指摘事項がなかったとしても、調査時に確認した書類や取引の流れ等は事績として残っているため、前回と変更がある部分は深く聞かれる可能性があります。

④資料せん分析

税務署には様々な情報が集まっています。法的に提出が義務付けられているものは当然ですが、それ以外に有効な情報を集める専門部署まであります。よく利用されるものとして海外送金等の資料があります。これは100万円超の海外送受金をした場合に金融機関が提出する法的な資料です。以前も記載したとおり、海外取引については、国税庁全体として重点的に調査することにしているため、準備調査でもチェックしています。

⑤その他

①から④の他に飲食業等では事前に店舗内を確認する「内観調査」や会社・自宅等の周辺を確認する「外観調査」等があります。  ただし、税務署では調査件数が多く、1件に多くの時間を使うことが難しいため、毎回深度ある準備調査を行うことは難しいと思います。(次号に続く)

税務総合戦略室便り 第79号(2016年06月01日発行分)に掲載

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