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地価公示価格の発表

category: その他
第78号(2016年05月01日発行分)
元国税調査官・税理士
黒崎 俊夫

3月、国土交通省より本年の地価公示価格が公表された。それによると全国25,000地点平均で前年比+0.1%の上昇、東京都に限れば商業地で+4.1%、住宅地で+1.6%の上昇となっている。7月に公表される相続税の路線価はこの公示価格を基準としているが、路線価は公示価格と同様毎年1月1日を価格時点とし、公示価格水準の概ね80%で設定しているから、付近の公示価格の変動率で今年の路線価も変動すると思って間違いはない。
 公示価格にしろ路線価格にしろ、現場ではその不動産の実際の価格よりも前年比変動率を重視する。特定の地域の変動率が、ある地点ではプラス、ある地点ではマイナスとなると、どっちが正しいのか、昨年の価格が誤っていたのではないかという疑念につながる。その地域の妥当な変動率の枠内で価格を調整しようとする結果、中には実際の価格と乖離した価格が求められるということもありうる。

最大の上昇率を記録したのは大阪心斎橋通りにある公示地で827万円/㎡、前年比なんと+45.1%。ミナミと呼ばれる地域の中心であり、御堂筋から道頓堀まで、百貨店、飲食店、ブランド店等が立ち並ぶ大阪を代表する繁華街である。先日私も私用で訪れたが、いわゆる爆買の海外観光客も含め、商業施設集積度は極めて高く予想以上に賑わっており、昨年の路線価では六本木や上野より低いが、繁華性を考えればそれ以上の価格をつけてもおかしくないという印象を持った。売買実例や家賃相場等から弾いた今年の価格はおそらく妥当なのだろう。本当はもっと高い値をつけたかったのかもしれないが、なぜいきなり50%近い上昇となったのか、昨年の上昇率は+10.6%であるが、一年前にはこの活況を予想できなかったのか、予想できても高い価格をつける決断ができなかったのだろう。しかし、当地点のバブル時平成3年の価格は3,000万円/㎡であり、その時の価格の3割にも満たないのが大阪の現状のようだ。

一方、東京都の最高地点は銀座4丁目山野楽器のところで4,010万円/㎡、+18.6%、バブル期(平成3年3,850万円)をも上回る過去最高を記録した。だが、同じ中央通り沿いの不動産を某Jリート投資法人は130億円で購入している。そこから建物価格を差し引き土地価格を推算すると、坪あたり2億円、1㎡約6,000万円で公示価格の5割増しの金額である。しかも銀座4丁目交差点より離れた2丁目にある。何が言いたいのかというと、不動産投資法人は、土地取引の指標となるべく設けられた公示価格の情報など全く参考にしていないのである。

投資法人は不動産の生み出す収益力を投資の指標とする。土地の上にどんな建物が建っており、どんなテナントがどんな条件でどれだけの家賃を支払っているかにより、土地建物一体としての不動産価値を求める。収益価格は純収益を還元利回りで除して求めるが、高賃料が安定的に得られることは還元利回りを低下させる要因になるから収益価格は上昇する。近年の都心商業地域の地価上昇は、不動産投資法人の資金の流入が地価を押し上げた結果とも言えるが、建物を含んだ一体不動産としての収益性を重視する投資法人の価格決定に対し、上物のない更地としての価格を求める地価公示価格自体にどれほどの意味があるのか疑問ではある。

日銀のホームページによると、H27の不動産業に対する銀行の新規貸出額は10兆6,000億円であり、新規貸出額に占める割合は24%である。この数字はバブル期の最高額10兆4,000億円、18%(平成元年)をも上回る。さらに不動産投資市場にもっと資金を呼び込みたい政府の思惑もあり、今後も行き場のなくなった資金が不動産に流れる可能性は高い。
投資に見合う良物件は高い価格をつけるだろうが、そうでない物件は買手のつかない市場滞留商品となり、昨今の空き家氾濫状態を考えるとそんな不動産の増加は容易に想像できる。そこで公示価格ないし路線価が、成約したリートの高価格事例だけでなく、成約していない物件の情報等をも総合的に考慮したものでなければ、その存在意義をも失うことになりかねないだろう。

税務総合戦略室便り 第78号(2016年05月01日発行分)に掲載

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