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情報の選択と使い方 
~安易な節税対策のリスクについて(②貸倒損失その3)~

第78号(2016年05月01日発行分)

執筆者12

前号では3月決算法人であるA社の申告書が提出された5月末から調査当日までの流れを税務署側の視点で「指令」まで紹介しました。
今号では、その続きとして調査連絡である事前通知について紹介したいと思います。

【申告書提出から税務調査までの流れ】

【調査連絡】

統括官から調査の指令を受けた調査担当者は、納税者に対して調査を行う旨の連絡を行うことになります。これを「事前通知」といいます。国税通則法の改正により、税務調査の手続きが明確化されました。以前は、指令を受けた場合には、顧問税理士に「A社の税務調査を行いたいと思います。調査希望日は○月○日から2日間でお願いします。」と電話し、日程が合えば事前通知は終了となります。しかし、国税通則法改正後は、例えば次のような項目を電話等で納税者又は代理人(税理士)に通知しなければなりません。

  • 調査対象者(株式会社A社・東京都中野区1-1-1)
  • 調査担当者(中野税務署法人課税第4部門山田太郎ほか1名)
  • 調査の開始日時(平成28年8月22日及び23日)
  • 開始場所(A社本社)
  • 調査対象税目(法人税・消費税・源泉所得税)
  • 調査対象期間(平成26年3月期~平成28年3月期)

事前通知についてよく話題になるのが、①日程を延期することはできないか②事前通知を必要としない場合とはどういう場合なのかというものです。

① 日程の延期について

税務署からの調査連絡に対して延期を申し出た場合には、税務署側に悪い印象(何か隠している等)を持たれるのではないかと心配している人もいるかもしれませんが、全くそんなことはありません。個人的にはむしろ事前通知をした時に税理士が「いつでも大丈夫ですよ。」と言った時のほうが逆に怪しく思います。オーナー企業の場合には、経営者自ら忙しく動いていることがほとんどであるため、税務署側からの調査希望日と予定が合うことのほうが少ないと思います。したがって、税務調査の日程は理由を説明して延期してもらえば問題ないです。ただし、いたずらに延期していると判断された場合には、突然会社に調査が来るかもしれません……。

②事前通知を必要としない場合

原則として事前通知をする必要がありますが、事前通知を行わないで税務調査が実施されることがあります。これは違法ではなく、事前通知を要しない場合とは、「納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合」と規定されています。この規定を見ても具体的ではないため、どのような場合に事前通知がいらないのかはっきりしないと思います。通達及び事務運営指針等にもう少し詳細に記載はしていますが、納税者にとってはなかなか分かりづらいです。おそらく税務職員も明確に説明できないのではないかと思います。例えば現金商売である飲食業であればすべて事前通知がいらないとは限りません。また、現金商売でない製造業・建設業等について必ず事前通知が必要とは限りません。現状としては、税務署の一般的な調査においては、事前通知が行われることがほとんどです。もし事前通知なしで調査に来た場合でも、慌てずにすぐに顧問税理士に連絡してください。  次号では、税務職員がどのような準備をして調査に臨んでいるかを紹介します。

(次号に続く)

税務総合戦略室便り 第78号(2016年05月01日発行分)に掲載

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