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情報の選択と使い方 
~安易な節税対策のリスクについて(②貸倒損失その2)~

第77号(2016年04月01日発行分)

執筆者12

前号では利益を圧縮するために4千万円の貸倒損失を計上したA社が、申告書提出後に税務調査の連絡を受けたところまで紹介しました。
 今号では、3月決算法人であるA社の申告書が提出された5月末から調査当日までの流れを税務署側の視点から紹介したいと思います。

申告書提出から税務調査までの流れ

申告書提出から調査当日までの税務署側での大まかな流れは次のとおりです。

提出から担当部門へ

申告書は税務署に提出してもすぐには担当の部門には届きません。まずは、内部処理を行うために別の部門でシステム入力・申告書のエラーの把握等を行います。提出から約1か月後に担当部門に申告書が届くことになります。
 担当部門がどのように決まるのかというと、税務署によって異なりますが、会社規模・業種・地域等によって決定し、毎年見直しを行っています。したがって、前回税務調査に来た部門とは異なることもよくあります。

選定から指令

次に担当部門に届いた申告書から調査する会社を決定します。この調査する会社を決定することを「選定」と言いますが、一般的には部門のトップである「統括官」が選定を行います。数多くの法人の中から調査先を決定するこの選定作業はとても重要です。もちろん最初から法人に関する資料や情報があり、調査することがほぼ決まっている場合もありますが、資料や情報がある法人は少なく、何もない法人がほとんどです。この何もない法人の中からいかに調査法人を選定するかが統括官の腕の見せ所です。この選定方法についても統括官によって異なります。ここでA社の担当部門の法人課税第4部門のF統括官と隣の法人課税第5部門のG統括官の選定方法を比較してみたいと思います。

①F統括官の場合

部門に届いた申告書を1件1件確認していくタイプの統括官です。F統括官は、申告書を確認しながら付箋を貼り、気になる会社の過去の申告書・代表者の申告状況等まで検討します。そこまで検討して調査先を選定し、各調査担当者に指令します。もちろん手間がかかりますが、調査担当者に指令する際に具体的な選定理由の説明や指示があります。

②G統括官の場合

部門に届いた申告書をほとんど見ないタイプの統括官です。申告書を見ないでどのように選定するかというと、国税庁のシステムから出力される分析表を参考に選定します。過去の申告状況等がシステムに保存されているため、システムが例えば売上、所得金額が急増・過去不正法人等のメッセージを表示し、これを頼りに選定します。なぜ、F統括官のように申告書を1件1件確認しないかというと、時間的制約・調査件数の増加等の理由もありますが、調査経験が少ない統括官の場合には、1件1件見ても選びきれないというのが本音ではないかと思います。そのため、調査担当者に指令する際にも具体的な選定理由の説明や指示はほとんどありません。
 この2人の統括官が指揮する部門のどちらが良い結果がでると思いますか?もちろん調査官の調査能力に影響を受けますが、F統括官が率いる4部門が良い結果を出すことは予想できると思います。

 

私も実際に両タイプの統括官と一緒に仕事をしたことがありますが、F統括官タイプの時には良い実績を残すことができました。
 今回のA社の選定理由は、貸倒損失4千万円であることは間違いないと思いますが、担当部門が5部門だったら調査がなかったかもしれません。(次号に続く)

税務総合戦略室便り 第77号(2016年04月01日発行分)に掲載

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