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「持分なし医療法人」への移行と相続(最終回)

第77号(2016年04月01日発行分)

執筆者3

1 移行しないという選択

どうしても同族経営・支配を維持したい。あるいは、持分なし医療法人に移行したとしても、「一定の非課税要件」を満たすことはとてもできないので〝贈与税〟が発生してしまう。しかも、高額な税負担となるので、医療法人では負担しきれない。
 このような場合、移行しないという選択肢もあります。
 出資持分なし医療法人に移行しない場合、出資者対策を続けなければならない、相続の都度、株価対策をしなければならないというデメリットはあります。
 But、承継する医療法人の出資持分に関しては、退職金支給などによる株価引下げも可能です。そして、法人の財産は明確に個人のものです。何たって、経営努力の成果として個人オーナーはストレートに報われるのです。
 仮に、持分を譲渡した場合の税負担は、株式譲渡益ですから、20%(このほかに復興税の負担)という低率の分離課税で済みます。

2 結論に向けて

【図:移行の選択肢】

移行した場合と移行しない場合との違いは、結果として税負担に連なりますので、今回は税理士として(1回限りの、医療法人の贈与税負担)vs(累代の相続税負担)どちらがベターなのか?という構図でお話をしてきました。
 But、結論をつける前に、選択にあたって考慮すべき点は税金以外にもたくさんあるかと思います。良いご判断をお祈りします。
 なお、移行の選択肢は他にもあるのだということを図にしてみました。
 移行先としては①や②の法人形態が通常は考えられます。更に、④の社会医療法人や⑤の特定医療法人には税制優遇もあり、移行にあたっての選択肢として十分検討の余地のあることを申し添えます。

 

3 移行の検討は必要

理事長は、今ある『持分のある医療法人』を『持分なし医療法人』へと移行しますか?
 いずれにせよ、法人であり続けることによる〝税金メリット〟は、今後、大きくなります。と言うのも、医療法人を含めた法人全体に適用される税率は、地方税を含めたところで、現行の計35・4%から計30%以下の税負担率への軽減を目指し、税制改正が行われる予定が確実だからなのです。更に、中小法人であれば、800万以下の所得に対しての法人税率は25・5%→15・0%に軽減されます。
 病院を大きくする、財産を増やすには、税負担の少ない医療法人の方が、個人に比較して効率的におこなえると言えます。加えて、大きな病院(ベッド数40床以上又は救急告示病院)に限定されますが、現行の特定医療法人制度の下、財団又は持分の定めのない社団の医療法人であって、一定の承認基準を備えた ⑤『特定医療法人』(措法67条の2第1項)として国税庁長官の承認を受けた場合、法人税率は19%の軽減税率(通常は25・5%)が適用されるというメリットを受けることもできます。この制度も拡充されるかもしれません。更に、新設された④『社会医療法人』もあります。この法人にも税制上の優遇措置があるので、病院を大きくしたい場合、一考の価値はあります。
 一方、個人開業医の場合、その税負担は、税制改正により、高額所得者であればあるほど、年々高くなってきているのです。所得が4千万円超であると、27年以降に適用される所得税率は45%になります。もっとも、個人である方が格段に財産運用・処分の自由度は高いことも事実です。このため、開業医さんにとって法人化(出資のない医療法人の設立)は悩ましい選択でもあるのです。
 一度、理事長の相続税と医療法人の贈与税、その負担額についての〝現状分析〟を受けてみて、移行の是非を比較・検討してみませんか?

税務総合戦略室便り 第77号(2016年04月01日発行分)に掲載

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