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税務調査から学ぶ 第二十九回 
税務調査の最盛期がやってきました

第29号(2011年07月01日発行分)

執筆者1

7月10日の定期異動を過ぎて税務署もいよいよ今事務年度の税務調査最盛期に突入したようです。弊事務所にも続々と税務調査依頼の連絡が入ってきております。本年は3月11日の震災以降、税務調査を延期していた影響もあり、例年にも増してスタートダッシュが早い印象を受けています。
 8月中旬から11月いっぱいは、通常、税務署がその事務年度で一番力を入れた調査(不正計算や多額の追徴を見込んでいる調査)を行う時期です。
 今回は、調査連絡を受けた内容から、現在税務署が重点的に調査を行おうとしている流れを分析し、お伝えしたいと思います。

「単体調査」から「グループ企業調査」への流れ

7月以降に調査連絡があったお客様のうち、実に7社が子会社や関連会社を有する、いわゆる「グループ企業」でした。現在調査中のA社の場合、A社を含め5社を一斉に調査したいという連絡がありました。調査担当部署は「特別調査情報官」という部署です。この部署は、東京国税局管内で9税務署に設置されており、原則として3つ以上の税務署にまたがり、かつ5つ以上の関連企業を有しているグループをまとめて調査するためのポストです。税務署の調査官は自分の所属している署の管轄外の調査を行うことはできないため複数の税務署にまたがるグループ企業の調査はこのような特別の部署が行うこととなります。  近年、税務署ではグループ企業間の取引について注目をしています。資本関係が同一であったり役員が親族同士であるなど同じオーナー企業間の取引においては、他社との取引と違い金額などが恣意的に決められたり、所得金額を圧縮することに使われたりすることが多いという見方を税務署ではしているためです。そのため、ひとつの会社を単体で調査するのではなく、関連会社を一斉に調査することにより効率的に調査をしていこうという流れが加速しています。複数企業を経営されている方においては、関連会社間の取引について問題視される可能性が大きいということを意識しておく必要があろうかと思います。なお、税務署ではどのようにしてグループ企業を把握しているかといいますと、2001年に莫大な予算を投じて導入した【KSKシステム】(K:国税、S:総合、K:管理システムの略)を活用しています。
 全国の国税局・税務署において収集した資料情報や決算申告事績をコンピュータシステムに入力し、住所、氏名(法人名)等により名寄せすることで、瞬時にグループ企業を抽出することが可能になったのです。

「法人・個人一体調査」への流れ

法人グループの一体調査だけではなく、税務署では多税目にまたがる事案についても力を入れてきています。税務職員は採用後、法人税・所得税・資産税などの部門に配属されると基本的に退職まで同一の仕事(事務系統)のまま勤務します。自分の系統以外の税目については精通していません。国税庁では富裕層に対する調査を重点的に行うことを指示している影響もあり、相続税・所得税・法人税を一体として調査する流れも大きくなっています。
 オーナー企業の税務調査と先代社長の相続税調査や贈与税調査、または個人の不動産所得の調査も一斉に行うというようなやり方です。このような場合、各税目と部門を超えた調査が必要となるため、「特別国税調査官(総合調査担当)」という特別の部署が調査にあたることになっています。この「特別国税調査官(総合調査担当)」は次回の異動で税務署長になるクラスの人材が配置されていることからも、当局のこの業務に対する力の入れ方が測れると思います。
 税務署には通常の調査部門だけではなく、今回ご紹介したような「特別の部署」が数多く存在しています。こういった「特別の部署」が調査に来る場合、何らかの明確な意図があります。今後も折に触れ、税務署の様々な部署をご紹介してまいりたいと考えております。

税務総合戦略室便り 第29号(2011年07月01日発行分)に掲載

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