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エステートプランニングって知ってますか? 
~富裕層の国際相続問題(第一回)~

第35号(2012年02月01日発行分)

執筆者3

日本における相続事案は、日本人(被相続人)が国内財産のみを保有し、日本人に相続されるという場合がほとんどであり、相続問題は専ら国内だけで完結していたといえます。
 ところが、経済取引のグローバル化の進展にともない、人・物・金の国境を越えた移動が活発化し、日本においても相続問題が国際化しつつあります。
例えば、国際結婚により海外で夫婦共有財産を取得する、海外勤務や海外留学後に現地に移住する、国内資産だけではなく海外資産をも含めてポートフォリオ投資を行う、海外でも事業をおこなうため現地に移住するといった状況の変化にともない、日本人が国際相続に直面するなど、日本においてもかなり身近な問題となりつつあります。 特に、国際分散投資や海外での事業をおこなう富裕層にとって、国際相続問題に遭遇する機会は多くなっています。欧米においては、自身の財産や事業をスムーズかつ効率的に親族等に継承・移転できるよう、生前から計画を行うのが一般的です。これをエステートプランニングといいます。また、グローバル化の進展にともない、財産や事業が複数国に存在するようになり、国境を越えたエステートプランニングが行われています。

国際相続は、1カ国だけではなく、複数国が関係し、それぞれ相続に関する制度や租税制度が異なることから、国内だけで完結する相続には見られない様々な問題が発生します。相続に関する制度、例えば相続法、家族法、夫婦財産制度、財産の所有制度は国によって異なり、どの国の制度が適用されるのか(準拠法)がまず問題となります。
 また、各国における相続税等の財産課税制度についても、税金の種類、納税義務者、課税標準の計算方法、税率等は国によって異なります。相続税制度の無い国、あるいは廃止をした国が増えているとはいえ、未だに、多くの国では人の死亡によって財産が移転する機会を捉えて、その財産に対して相続税課税を行っています。そういった国に投資をした場合、居住者ではなくても、その国にある財産について課税関係が生じることがあります。

まず租税制度についてですが、相続税の課税方式としては遺産税方式と遺産取得税方式があります。
 遺産税方式とは被相続人の遺産を対象に一括して課税する方式で、米英等で採用されています。一方、遺産取得税方式とは相続人毎に取得した相続財産について課税する方式で、ドイツ・スイス等ヨーロッパ大陸諸国で採用されています。ちなみに日本では両者の折衷(法定相続分課税)方式を採っています。また、カナダのように相続税の代替として死亡時譲渡益課税を行う国もあります。
 例えば、日本人(国籍は日本)で日本に居住する被相続人が米国の不動産を所有していたケースで、その相続人(子供)も日本に居住している場合、その子供は日本の相続税法上では無制限納税義務者に該当し、日本国内の財産ばかりではなく海外財産である米国不動産も共に相続税の課税対象となります。
 一方、米国の遺産税は、被相続人が米国市民権や永住権を有してない場合には米国所在の財産のみに対して課税されるので、米国不動産にも遺産税が課せられます。結果、国際的二重課税が発生します。
 この場合、米国所在の不動産に課された遺産税を日本の相続税額から控除すること(外国税額控除という)により、二重課税は調整されます。
 また、同様に日本に居住する被相続人が日本に居住する相続人に対してカナダに所在する不動産を相続させた場合どうなるのかというと、日本では相続人は無制限納税義務者となるので相続税が課税されます。
 一方、カナダにある不動産について、カナダでは相続税に替えて、「死亡時みなし譲渡課税」の適用対象となり、キャピタルゲインについて、所得税が課せられます。したがって、前者と同様に実質的には国際的二重課税が発生します。
 ところがこの場合、外国税額控除により二重課税を調整することはできません。何故なら、カナダの「死亡時みなし譲渡課税」は「相続税に相当する税」には当たらないので、日本では、外国税額控除の対象とはならないのです。ウーム、難しくて厄介だ。

税務総合戦略室便り 第35号(2012年02月01日発行分)に掲載

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