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元国税調査官が語る国際税務解説 第六回 
外国法人税務と外国法人の調査について

第35号(2012年02月01日発行分)

その他

今回は、以前「国際税務に関する法人税務について」で少し触れましたが、外国法人税務について詳細を解説したいと思います。若干、重なる部分もございますが、御了承いただければと思います。

(1)外国法人とは

「外国法人」とはどのような法人かご存知でしょうか。おそらく、ほとんどの方が海外に所在する法人をイメージするのではないでしょうか。確かにそのような理解でも問題ないのですが、法人税法では、外国法人を「国内に本店を有しない法人」という定義付けをしています。
 国内に本店を有しているのかどうかという点については、日本では「設立準拠法主義」という考え方のもと、どこの国の法律に基づいて設立されたのかという観点で判断することになります。したがって、日本に本店が登記されていれば、日本の法律に基づいて設立されたものとして「内国法人」、海外に本店が登記されている法人については、「外国法人」として取り扱っています。つまり、日本の居住者や内国法人が100%出資している法人や、日本のみで業務を行っている法人であっても、外国で本店が登記されていれば、すべて外国法人に該当します。

(2)外国法人の調査

税務当局がいう外国法人の調査とは、一般的に、外国で登記された法人の日本支店の調査のことをいいます。外国の本店に対しては調査権限の問題があり、日本の税務当局が調査することは原則できません。しかし、反面調査等の場合には、相手国の了承を得た上で調査ができる場合もあります。
 したがって、本文において外国法人の調査とは、外国法人の日本支店の調査を指すこととします。

①外国法人調査のポイント(日本支店への適正な所得配分とPEの該当性)

それでは、外国法人の調査は内国法人の調査と較べてどのような点が異なるのでしょうか。内国法人の一般的な調査のポイントというのは、期末の期間損益のずれや棚卸の計上の適否、または他科目交際費等が挙げられると思います。
 しかし外国法人の調査では、このような事項については時間に余裕があれば確認する程度であり、重要なポイントにはなりません。
 外国法人の調査において最も重要なポイントは、「本支店間取引において、日本に適正な所得が計上されているのかどうか」を確認することにあります。つまり、外国法人の調査は、移転価格の調査と類似している部分があるということです。しかし、移転価格の調査との大きな違いは、移転価格調査は「異なるエンティティ」である関係会社間の取引価格の適否を確認することにありますが、外国法人の調査は「同一エンティティ」である本支店間の内部取引価格の適否を確認することにあります。

ではなぜ、本支店間取引の内容が重要になるのでしょうか。これは、本支店間の取引は内部取引に該当し、恣意的な価格操作を行うことができるため、簡単に日本の利益を海外に付け替えることが可能となるからです。特に日本は高税率であるため、グループ全体でみた場合、日本支店の利益を少額にし、低税率の海外の本店に利益を多く計上することで、グループ全体の税コストを軽減することができるのです。
 したがって、このような本支店間の恣意的な価格操作を放置してしまうと日本の税収が海外に逃避してしまうため、調査において適正な所得が日本に計上されているのかを確認することが重要になります。
 二つ目の特徴として、恒久的施設(以下「PE」という)の問題が挙げられます。PEとは、Permanent Establishmentを略したものであり、外国法人の日本における「一定の拠点」のことをいいます。外国法人は、日本にPEを有する場合、日本において事業所得について申告する必要が生じます。
 一般的に、日本の支店は、当該「一定の拠点」に該当し、PEに該当するケースが多くなります。支店のような物的な拠点を、一般的に「一号PE」といいます。また、租税条約や国内法において、PEには、準備的・補助的業務のみを行う拠点は該当しないという共通の考え方がありますので、支店という名称であっても、海外本店のための情報収集やリエゾン業務等のみを行う場合にはPEに該当しないことになります。そのため、日本の拠点が重要かつ本質的な業務を行っておりPEに該当するのか、それとも準備的・補助的業務を行っているためPEに該当しないのかは、外国法人の調査における最初の大きなポイントになります。
 またPEには、支店や事務所のような固定施設のみならず、一定の代理人も該当する場合もあります。これは、日本に拠点としての一定の場所を有しない場合であっても、本店のために常習的な契約締結権限を有しているような代理人の存在を一定の拠点ととらえて、PEと認識するという考え方です。代理人には個人だけでなく、法人も該当するケースがあります。このような代理人のPEのことを一般的に「三号PE」といいます。
 しかし、代理人PEには、本店から法的にも経済的にも独立している「独立代理人」は除かれています。これは、代理人が本店以外の者とも取引をしており、当該取引金額が相当程度を占める様な場合には、本店との取引にかかる代理人業務も通常業務の一環として考えることもでき、本店との従属性も希薄になるため、代理人PEには該当しないと考えているためです。
 このように、外国法人の調査は、「日本支店への適正な所得配分」と「PEの有無」という二つのテーマが大きなポイントになります。

②所得計算の特徴

内国法人は全世界所得課税ですので、国内源泉所得だけでなく国外源泉所得にも課税されます。一方、外国法人は、国内源泉所得のみの課税となります。したがって、外国法人の課税所得の算定にあたっては、国内源泉所得の内容について理解しておく必要があります。また、PEの種類によって、課税される国内源泉所得が変わってきますので、一号PEなのか三号PEなのかを確定させる必要があります(一定の建設現場等のことを「二号PE」といいますが、ここでは、説明は省略します)。
 また、日本にPEを有しない外国法人の場合、事業所得については課税されないことは先述しましたが、日本国内の不動産所得や一定の日本法人の株式の譲渡等については日本にPEがない外国法人でも課税されるケースがありますので、注意が必要です。
 この他にも、所得計算に際して、内国法人には適用される一方、外国法人には適用されないいくつかの規定があります。外国税額控除、タックスヘイブン対策税制、特定同族会社の留保金課税は、政策的な観点から外国法人には適用されないことになっている代表的な規定です。したがって、これらの事項を考慮した上で、外国法人の適正な法人税額を算定しなければなりません。

③外国法人調査の特徴

外国法人の調査の特徴として調査期間が長くなりやすいことが挙げられます。理由としては、調査官が日本支店の担当者に資料の提出を要求したり、質問をしても、最終的に判断することができる権限者が海外の本店にいることが多く、資料の提出や質問の回答までに非常に時間がかかってしまうためです。また、契約書や関係資料が英語で記載されていることが多く、この事も調査の期間を長引かせる大きな要因になっています。調査官にとっては、調査件数のノルマがあるため、調査の進捗と深度ある調査との間でジレンマに陥るのです。
 最後に所管の話をしたいと思います。内国法人は、通常、資本金一億円未満の法人は税務署所管となり、資本金一億円以上の法人が国税局所管となります。一方、外国法人は資本金の多寡にかかわらず、すべて国税局の所管となります。
 これは上述したように、外国法人は内国法人と較べ調査の視点や法令の取扱いが異なる部分があるので、国税局で一括管理して、外国法人部門の調査官が専門で調査を行う方が調査の効率性が上がるからだと考えられます(外国法人部門は国税局にしかありません)。

外国法人というと、ほとんどの方が関係ない話と感じるかもしれませんが、グローバルな事業を営む内国法人にとっては、外国法人を設立した上で、あえて日本に進出するというスキームも、今後は一つの方法として検討する余地も出てくるのではないでしょうか。

税務総合戦略室便り 第35号(2012年02月01日発行分)に掲載

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