昨年春、税務総合戦略室を組織して以降、10社以上の税務調査立会いを行ってきました。税務総合戦略室は元国税局の出身者で、20年以上税務調査を実際に行ってきたメンバーの集団ですから調査の立会い業務は最も得意とするところです。
調査官の調査手法、思考回路を知り尽くしていますので、『今の質問は、こういうことを言わせようとしているな……』『今回はこのグレーゾーンの部分をこの手法で否認に持っていこうと考えているな……』『きっと上司の統括官にこういった指示を受けてきたのだろうな……』といったことが手に取るようにわかってしまうからです。
今号は私達の行った税務調査立会いにおけるいくつかのエピソードをお伝えしたいと思います。
8月某日、売上高200億円超の企業様より調査立会いのご依頼をいただきました。調査担当部署は東京国税局調査部です。
すでに春頃より調査継続中でしたが、ご相談の内容をお聞きしてびっくりしてしまいました。「調査官に脅されて困っています」とおっしゃるのです。詳しくお話しをお聞きしたところ、調査官より、「認めないなら取引先に反面調査をしまくるし、従業員にもいろいろと聞いて回るぞ」「おたくの社長は犯罪者だ」などと恫喝まがいの発言を連発され、納得のいかない内容ながら非違を認めた【確認書】を提出させられたというのです。
その調査官は7月の異動で査察部に配置換えとなり、私達が立会いをしたときには担当者が変更していました。新しい担当者に調査の争点を確認したところ、前任者より調査官に都合のいい事実しか引継ぎされていないことがわかりました。
ここからが我々、税務総合戦略室の腕の見せ所です。私たちはお客様の了承を得て、すぐに国税局に連絡し、上司である調査部門の統括官(税務署の署長クラスです)に直接会いに行きました。そして前任者が強権的で常識はずれの調査を行っていたことについて抗議し、国税局が課税の拠りどころとしている【確認書】は脅されて提出したものであり、事実とは異なることを根拠資料とともに説明しました。さすがに統括官はきちんとした方で、我々の主張を理解していただき、円満に調査を終結することができました。
一般の税理士にとって税務署はともかく国税局に出向いていくことはハードルが高いと思われますが、私たちにとってはかつての職場ですので、苦にはなりません。昔の同僚とやりあうのは正直やりづらい面もありますが、そこはお互いプロとプロ、それぞれの立場で正々堂々と事実認定や法令解釈の意見を戦わせるだけです。
たまに誤解を受けますが、国税OBだからといって税務当局との馴れ合いや妥協、ましては情報を教えるなどといったことは一切ありませんので、どうかご安心ください。
9月某日、ある芸能人の事務所に調査連絡がありました。名前を聞けばほとんどの方がおわかりになる有名人です。
調査にあたってお客様の一番の心配は「税務調査が行われているという事実からマスコミにおかしな風評を流されてはタレントイメージに傷がついてしまう」ということでした。不正経理を行っているようなことはまったくなく、非常に真面目な法人で、税金の追徴に関してそれほど心配はされていませんでしたが、他の芸能人が週刊誌などに脱税の噂を掲載され、仕事に多大なる影響を受けた例をいくつも見てこられたことから風評被害を本当に恐れていました。マスコミは、税務調査が入っている⇒脱税のような書き方をしてしまうものだという不安です。
そこで私たちは調査当日の前に税務署を訪問し、いくつかの依頼をいたしました。
税務署も依頼の趣旨を汲んでいただき、配慮してくれたため、調査は終始なごやかな雰囲気で進行し、結果も良好に終結いたしました。
私達は税務のプロとして調査の交渉を行うことは当然ですが、それと同時にお客様の様々なニーズをお聞きし、出来る限りそのニーズにお答えしていくことを大切にしています。
10月某日、私達のセミナーにご参加いただいたお客様より、セミナー終了後にご相談をいただきました。歯科医院と医療法人を経営されている方でした。
来月税務調査を控えているが、数年前の調査で非常に嫌な思いをされたため、今回の調査にも大きな不安を抱えており夜も眠れないでいるというお話しでした。前回の調査は半年以上の長期に及び、反面調査も行われて、心身ともに疲弊してしまったとのことでした。お客様のご要望は3点ありました。
というものです。
調査当日、最初の事業概況のヒアリング30分程度だけ調査に同席をお願いし、後は診療に専念していただきました。調査の対応は我々戦略室の税理士2名で対応しました。調査官は20代の女性です。女性の調査官は今時の若い男性と違い「こんなことを聞いたら恥ずかしい」といった感覚が少なく、またマニュアルどおりの調査を行うことが多いので、時に摩擦を生むことがあります。今回も、
などの問題点がありました。
立会いを行った戦略室メンバーは正直怒り出したい気持ちをグッと抑え、調査官の先輩として常識的な調査手法を教えてあげたそうです。その後も調査官の質問に間髪を入れず的確に応答していたところ、調査二日目の昼ごろには「従業員に対するお茶菓子が多いですね」など、どうでもいいような指摘しかなくなってきたので、特に問題点が無いようなら調査は終了にしたらどうか水を向けたところ、実質1日半で拍子抜けするほどあっさりと調査が終了しました。
『とにかく早く調査を終えたい』という希望どおりの結果となり、院長先生と奥様には大変喜んでいただけました。特に奥様が緊張から解放され、涙を流して安堵されている様子を見て、私も思わず熱いものがこみ上げてきました。
今までのエピソードでお話したとおり、お客様の税務調査立会いに対するご希望は様々です。特に多くお聞きする声は「以前の調査が長期にわたり、調査官との交渉で疲れ果ててしまった」「顧問税理士が力になってくれなかった」というものです。
税務問題にグレーゾーンが存在する以上、調査においては【交渉】の能力で大きく結果が異なります。ご商売の内容や取引の説明はお客様にお願いするしかありませんが、税務の専門家として調査官との【交渉】は私達にすべておまかせください。
追徴税額を出来る限り少なくする努力はもちろん、早期の調査終了、無予告調査や反面調査などの諸問題に対しても全力でサポートしてまいります。
今月も3社の税務調査立会いが予定されています。どのようなエピソードが待ち受けているのか……。また結果をお伝えさせていただきます。
税務総合戦略室便り 第35号(2012年02月01日発行分)に掲載
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