1996年に始まった金融ビッグバンに伴い、金融が自由化され、海外の金融商品を簡単に購入することができるようになりました。皆様の中にも、海外の金融商品を保有している方がいらっしゃるのではないでしょうか。
このような場合、確定申告を行う必要があるのでしょうか? あなたが日本の居住者であれば、全世界の所得に課税されますので、海外金融商品に関する所得について申告を行う必要があります。海外の金融商品については、申告する必要がないと勘違いしている方も時々見受けられますが、大きな間違いです。税務当局の目が届きにくいということはあるかもしれませんが……。
海外金融商品を保有する場合は次の二つのパターンがあり、保有形態によって税務上の取扱いも変わりますので、注意が必要です。
日本の金融機関を通じて海外ファンド等の金融商品を購入する場合には、特定口座(源泉あり)を利用することにより、配当や売却損益の計算、源泉徴収等を金融機関が行ってくれるため、確定申告の必要はありません。場合によっては確定申告を行う必要がありますが、そのような場合でも市販されている書籍等で充分に確定申告に対応することがが可能です。
直接購入の場合は日本で購入する場合と比べ、手数料が安いこと、ファンドの種類も豊富であること、資産のリスク分散ができること等、多くのメリットがあります。しかし、海外口座の預金利息、外国株式の配当や譲渡損益、外国債券の利息や償還差損益、海外ファンドの配当や売却・解約損益、円換算した場合の為替差損益等について、自身で内容を検討し、確定申告を行わなければなりませんので、申告する際の負担が増大します。
その際、検討すべき事項について次のような事項が挙げられますが、詳細について解説している市販本はあまり見受けられません。
これらを検討するためには、所得税法の知識だけでは対応できません。「租税特別措置法」はもちろんのこと、場合によっては「投資信託及び投資法人に関する法律」、「金融証券取引法」、租税条約や各国の税制の知識が必要になる場合もあります。
特に「海外ファンド」の判定は、投資のビークル(器)としてどのような事業体を利用しているかにより所得区分が変わる可能性があるので要注意です。このような場合、英語で記載された目論見書を読み込まなければならないケースもあり、専門家の力も必要でしょう。
皆様が保有している海外財産を税務当局はどのように捕捉しているのでしょうか? まず、海外との送金・受金についてですが、100万円超のものについては、支払調書により確認が可能です。その他、銀行や富裕層関連ビジネスの法人を調査することにより、海外財産が把握されることもあります。
今後は、タックスヘイブン国との租税条約が強化され、国外財産5,000万円超保有者に対する支払調書の提出も義務づけられますので、国外財産の適切な管理や戦略的な運用がより必要になってくるでしょう。
弊社セミナー「国税はキャピタル・フライトを狙っている」では、上記内容について詳細を解説していますので、御興味がありましたら是非、御参加頂ければと思います。
税務総合戦略室便り 第36号(2012年03月01日発行分)に掲載
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