年に一度、定期的に人間ドックを受診しています。若い頃からお酒好きなものですから、毎年「γ-GTPの数値は上がっていないかな……」など診断結果に一喜一憂しています。やはり年に1回は定期的にチェックをしておくことにより、万が一のリスクを予防できますし、安心感を持つことができると思います。
最近は高額の人間ドック、健康診断に関するお問い合わせをいただくことが多くなりました。「入会金300万円、月会費30万円」「1回の人間ドック費用220万円」といったような内容もあり驚いてしまいますが、通常の診断とは異なりそれだけの価値のある内容なのだろうと想像しています。代表者、役員の方は会社にとってかけがえの無い存在ですので、高額な経費であっても可能な限り会社の経費として計上できるよう知恵を絞っています。
私達、税務総合戦略室のサービスメニューのひとつである『税務予防調査』は会社の税務診断です。
複数の元国税調査官が実際の税務調査とまったく同様の手法でお客様の財務・税務状況を確認することにより、本番の税務調査において指摘される税務リスクがないかどうかを診断するサービスとなっています。
実際の税務調査で多額の指摘を受けないための「予防」「対策」にご活用いただくと同時に、社長様や従業員の方々には税務調査対応の「練習」としての効果も感じていただいております。
予防的診断であっても時には緊急に診断が必要なケースもあります。それは、
場合です。
今回は我々の行ってきた税務予防調査のうち緊急診断のエピソードをご紹介したいと思います。
先月末、あるご相談をいただきました。「実は再来週、税務調査が行われるのですが、いくつか心配な点があるのです……」というものでした。売上規模約100億円、申告所得は毎期数千万円という優良企業様です。通常の税務予防調査の場合、事前に決算書を3期分ほど分析し、調査官の視点で問題点を抽出した上で調査日の日程をお打合せさせていただいていますが、今回はそんな悠長なことは言っていられません。すぐに日程を決め事前診断と対策を講じることにしました。
税務総合戦略室のメンバー4名を投入し2日間、みっちりと本番さながらの予防調査を実施しました。税務調査の練習としての意味合いもありますので、恐縮ですが調査官同様の厳しく突っ込んだ質問もさせていただき確認を行いました。
結果、税法上問題があると認められる事項、グレーゾーンではありますが調査官が指摘する可能性がある事項、合わせて10項目ほどの税務リスクをご報告させていただき、さらに想定問答の練習をいたしました。
数日後、本番の税務調査が始まりました。担当者は50代のベテラン調査官と部下である20代の女性調査官の2名で3日間の調査です。税務予防調査を行った戦略室のメンバーのうち2名も立会いました。
調査最終日の午後、調査官からの問題提起は5項目、すべて事前に検討済みの内容でした。
グレーゾーンの部分については用意していた対応策どおりの主張を行った結果「問題なし」となり、最終的な修正申告の内容は3項目、少額の追徴税額で終結しました。
調査官が帰った後、社長様及び経理部の方々より、『今までこんなに精神的に楽な調査はなかった。やっぱり事前に準備しておくと本当に安心ですね』との感想を頂戴し、まさに我々の意図している《事前診断》《対策》《練習》の効果を実感していただけたことに安堵いたしました。
秋頃にご相談いただいた予防税務調査のご依頼は税務調査に対するご心配とは異なるものでした。
「従業員による社内不正が心配で ……。事を荒立てずに不正の有無を調査してもらえませんか」
というお話でした。
老舗の料理店で、複数の店舗を経営し、有名百貨店内での販売も行っている企業様です。ご心配の内容を詳しくお聞きすると、
といった不安があるというものでした。
実際の税務調査の過程において社内の横領・着服などが発覚する場面が多々あります。我々税務総合戦略室のメンバーも国税調査官当時に不正を発見し、通常は歓迎されない税務調査で感謝をされたという経験を多かれ少なかれ皆持っています。
今までわからなかった社内不正が税務調査で見つかる理由は、
からです。
今回の税務予防調査でも通常の帳簿監査とはまったく異なる「国税調査官の調査手法」で調査を行わせていただきましたが、一例としてご紹介すると、私が行ったのは厨房に行って料理人の方から【仕出し料理を作成した際のメモ】を回収したことです。
「何月何日にいくつ仕出し料理を売り上げたか」という一番の真実の記録は実際に料理を作った厨房にあるからです。その日どんな料理をいくつ作らなければならないか、そのためには食材をどれだけ仕入れなければならないか、売上と原価の原始的な記録は厨房に存在するのです。メモはマジックでチラシの裏のような紙に記載されたものでしたが、過去からの記録が残っていて、数量と内容を確認するには十分なものでした。
原始記録を把握してしまえば、後は納品書や請求書、帳簿などの記録と照合することでおのずと問題点は浮かび上がってきます。
このような調査手法によりいくつかの社内不正の事実が発覚しました。「事を荒立てず……」というご要望から決着方法は社長様にお任せいたしましたが、私共のもう一つの使命は『二度と不正が起こらないための改善策をご提案する』ということだと考えています。将来に向かって、社内のチェック体制を確立し、内部牽制充実のための対策を取ることが大切だと思っています。
税務総合戦略室便り 第36号(2012年03月01日発行分)に掲載
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