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中国子会社へ出向したものを巡る課税上の問題(上) 
~中国を巡る国際課税の問題(第一回)

category: 国際税務
第37号(2012年04月01日発行分)

執筆者3

この間お花見の際に、国税での先輩税理士から、飲む前に1件だけ質問があるのだけど……と質問を受けました。
 その内容は、顧問先の会社で、従業員を中国の子会社に長期出向させた。出向にあたって、在宅手当という名目で、格差補てん金を親会社(日本)において支給している。親会社の負担した給与=補てん金部分については、中国の子会社に請求していないので、受け入れた金額はない。この場合、日本の親会社で税務上の問題は生じないか?
というものでした。

中国子会社と日本の親会社の間に給与水準の違いがあるのですかと聞き返すと、あるとの回答。当然あるネ、愚問でした。更に、格差補てん金を支給する根拠、社内規定のようなものはあるのですかと聞くと、海外勤務者規定があり、それに基づいて支給しているとの回答でした。それなら何も問題はないですね。加えて格差補てん金の支給については、源泉徴収の必要もありません。なぜなら、国外勤務に基づいて支給される給与等は国内源泉所得とはなりませんと先輩に答えて、飲み始めてしまいました。
 これにつけ加える話として、海外の子会社に出向させた者に対する給与の格差補てん金の取扱いについては、法人税基本通達9-2-35に定めがあり、その(注)書きに「2.出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額については、給与条件の格差を補てんするために支給したものとする」とあるので、負担金を出向元法人の損金に算入することができます。
 この場はこれで済んでしまったのですが、中国の子会社に従業員を出向させた場合、実は様々な税務上の問題が引き起こる原因となります。注意が必要です。

例えば、従事員数名を技術指導のために中国の子会社に出向させ、格差補てん金を国内で支給(負担)しているが、上記の場合とは逆に、負担した額を中国の子会社に請求している場合、中国子会社に請求した額をPEの役務提供料収入とみなし、課税されるという税務上の問題が中国において発生します。
 これは、日本の親会社が中国にPE(恒久的施設)を有していると認定された結果、中国において課税関係が生じたのです。
 国際課税では、一般に、所得の源泉地国にPEなければ課税なしとされています。この原則からすれば、中国子会社に従事員が出向していることのみをもって、中国国内にPEが存在するとは言えないので、一見不合理に見えます。
 すると、何をもってPEとするのかという、いわばPE(恒久的施設)の定義はどうなのかという話になりますが、日中租税条約第5条第5項の条文は、「日本企業の従事員が中国国内においてコンサルタントの役務の提供をしている場合において、その業務(プロジェクト)が12か月の間に合計6カ月間を超えて行われているときは、中国国内にPEを有していると認定する」と解釈することも可能なのです。

ここでのポイントとなるコンサルタントの役務の提供の定義については、日中租税条約にその規定がないため、その所得に課税する中国国内法の規定に従うことになります。この点について、中国の財務外字[1985]42号通知に9項目が列挙されていますが、その適用範囲は広く、ほとんどの技術指導が該当するものとされています。例えば、中国子会社の製造ラインの技術指導はコンサルタントの役務の提供に該当します。
 出向者が日本の親会社のPEと認定されると、中国の子会社から支払われる役務提供料収入に一定の利益率(15%以上の認定利益率)を乗じた金額を課税所得として、中国において企業所得税(税率25%)の納税義務が生じ、大変な追加税金の負担となります。
 したがって、中国に進出する際には前もって検討すべき問題のひとつと言っていいでしょう。この問題に対して、中国子会社の公認会計士は、中国子会社に負担を求めないよう指導しているのが現状です。

なお、出向者が親会社のPE(恒久的施設)を形成するか否かについては、2010年7月に出された国税発[2010]75号第5条7項に具体的な判断基準が示されています。これによれば、出向先企業に対して対価を求めず、単に人材を提供するのであれば、出向先企業に雇用されているだけであるので、出向元企業が出向者を通じてコンサルタントの役務の提供を行っていることにはなりません。

税務総合戦略室便り 第37号(2012年04月01日発行分)に掲載

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