十年の歳月が過ぎました。 国税組織に消費税が施行された時期です。当時、私は税務署の特官付調査官でしたが、間接税部門(間税部門)への転課の話しがありました。
「間税部門はどうだ」
「はい、お受けします」
即答です。環境を変えたかったのでしょう。そうすれば何か変わるかもしれないと思い、なんとなく転課してみたものです。しかし、この安易な返事が今後を左右するとは思いもしませんでした。今にして思えば、序章だったのかもしれません。転課してなかったら今の自分はないかもしれませんね。つまり、必然だったのです。
なぜなら、間税部門は翌年に機構改革により消滅。法人課税部門へ復帰することに。復帰先は特調部門。この転課はターニングポイントとなりました。
法人課税部門は常に増差(調査によっての修正申告による当初所得との差額)という言葉につきまとわれる部署ですが、なんと間税部門には増差という言葉がないのです。それでいて、税務署で国税犯則取締法(国犯法)を適用できる部門でもあります。賦課部門としてはなんとなく異色な感じのする部門です。さすが殿様部門ですね。
一年間の間税部門での仕事は次のようなことでした。
還付申告を中心とした実態確認。調査ではなく実態確認ということで、一日程度で還付の理由・その根拠資料などから確認して、誤りのある場合は修正申告の慫慂(提出の依頼)を行うのですが、加算税は賦課しませんでした。経過措置のようなものです。
酒の製造会社へ酒税調査。ひたすら現物確認及び在庫数量確認を行います。酒樽の容量を測るのです。そして、受払簿と確認。帳簿通りであれば、受払簿に確認のため印鑑を押します。簿外在庫はないか。簿外在庫を発見したら国犯法を適用の可能性が高くなります。
金融機関への印紙税調査。農協ですと金融業務と購買業務があり、金融は通帳の税印等について、購買はレシート及び領収書からの印紙納付確認を行います。
いつも同じ誤りを指摘しているように思いました。お土産のようなものなのでしょうか。
ガソリンスタンドでガソリンを買い上げて、その成分を分析します。ブレンドしていないか確認です。ブレンド品であるとわかると調査。悪質ですと国犯法を適用します。
この一年間は仕事的には忙しさはなく、割とのんびりとしていました。二部門制で特別国税調査官(特官)が二人。仕事の量的には、人員が多く(?)、仕事の取り合いまではしませんでしたが、あまり多い仕事量ではありませんでした。ですから、この一年間で残業は「ゼロ」でした。そのためかよく飲みに行ったものです。特官にはかわいがってもらったと思います。あの時間があったからこそ、十年間の曇った心が解放されて晴れ晴れしたと思います。仕事よりも、人との関わりを大事にできた時です。感謝ですね。
いつまで勤務しようか、いつ辞めようかと考えながらの十年。決断ができなかったのは、家族がいたから。もし家族がいなかったら、辞めていたかもしれませんね。環境が違えば考えも違ってきますから。
人は、新たなことを起こそうとするとき決断を求められると思います。新たに何かしようとするときは、今までのものを捨てる覚悟が必要です。すでに人は与えられているのです。両手いっぱいに持っているのです。そのため、決断をするということは、持っているものを断って、新しいことを決めるということです。自分はこれまで本当の決断をしてきたろうかと思います。
断って決める。
今まさに、何かを断ち切って決める本当の覚悟が必要な時代が来たと思います。
税務総合戦略室便り 第38号(2012年06月01日発行分)に掲載
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