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税務総合戦略室 室長通信 第五回 
脱税と節税と租税回避の違いわかりますか?

category: 税理士節税
第38号(2012年06月01日発行分)

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書店に行くと数多くのいわゆる節税対策本があふれています。〔Amazon〕で『節税』をキーワードに検索したら、1367件もの節税に関する書籍が販売されていました。失礼ながらその中には、税務の専門家にとってはごくあたりまえのことがすごい節税対策のように記載されているものも多いように感じてしまいます。

 また、顧問先企業様やセミナーを通じて出会ったお客様とお話していて、節税や脱税、さらには租税回避という言葉に関する受け止め方のニュアンスが私達と違うと思うことも多々あります。

 そこで今回は、「脱税」「節税」「租税回避」それぞれの違いについて考えてみたいと思います。

脱税とは何か?

TVニュースや新聞で連日のように税務調査による追徴の報道を目にします。そのようなニュースを見て「税金の追徴を受けた」=「脱税していた」と考える方が多いかもしれません。しかし、専門家の考える「脱税」はもっとずっと狭い範囲の概念です。
 例えば法人税の脱税とは何かと言えば、法人税法第159条(罰則)に定められた【偽りその他不正の行為により法人税を免れ、違反行為をした者は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(一部抜粋)】に該当する行為のことです。すなわち司法上の刑事罰を課せられるようなことをして初めて「脱税を行った」と言われることになります。
 偽りその他不正の行為により税金を免れると脱税ということになりますが、その、「偽りその他不正の行為」とは何かということについては、法律では明文化されていません。最高裁昭和42年大法廷判決では、「偽りその他不正の行為とは、ほ脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるような何らかの偽計その他の工作を行うこと」していますが、難しくて何を言っているのかよくわかりませんよね。
 私達国税OBの感覚では、査察調査を経て法人税法違反や所得税法違反などの嫌疑で国税局から検察官に刑事告発が行われ、検察官が起訴した案件のみを「脱税事件」としてイメージしています。一般の方が考えている脱税という言葉のイメージよりもかなり狭義の概念だという印象を受けるのではないでしょうか。

重加算税は脱税ではないのか?

税務調査により誤りを指摘された場合、その誤りの内容によって課される加算税が異なります。意図的ではない間違い・うっかりミスに対しては10%の過少申告加算税が課されます。一方、35%の重加算税が課されるケースは次のように規定されています。【国税通則法第68条(一部抜粋):税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは当該納税者に対し重加算税を課する】。この規定から通常、仮装・隠ぺい行為があった場合に重加算税が課されると言われています。
 では仮装・隠ぺい行為とはどのような行為でしょう。それについては国税庁の事務運営指針でいくつか具体的事例を例示しています。例えば、

  • いわゆる二重帳簿を作成していること。
  • 帳簿、原始記録、証憑書類などを破棄又は隠匿していること。
  • 帳簿書類の改ざん、虚偽記載、相手方との通謀による証憑書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算。
  • 帳簿書類の作成又は記録をせず、売上その他の収入の脱漏又は棚卸資産の除外をしていること。

などが挙げられています。
 ただし、あくまでも例示規定であり、あらゆるケースが網羅されているわけではありません。そのため重加算税の対象となるか否かは税務当局の裁量によって判断されているケースが多いように思います。実際に税務調査の立会いを行っていても、とても仮装・隠ぺい行為があったとは認められないような事案に対して『重加算税対象です』といった指摘があり、「どこに仮装・隠ぺい行為があったのか」という争いになる場面が多々あります。
 前述した事務運営指針の例示を見て、「これは脱税じゃないのか」と思われる方も多いでしょう。前科のつく刑事処分を受けるか否かという大変大きな違いがあるにもかかわらず、脱税と判断される「偽りその他不正の行為」と重加算税の納付という行政処分で済む「仮装・隠ぺい行為」の境は確かにあいまいだという気がします。
 新聞、TVなどの報道では、検察官に告発された調査事案は【脱税】、告発まではされていないが重加算税対象となっているような調査事案は【所得隠し】と表現し、区別しているようです。

節税は悪いことですか?

節税とは何でしょうか? 節税を何か後ろめたい事のように考えておられる方もいるようですが、節税は法律に定められた範囲内で税負担を減少させる行為、つまり合法的な行為ですから何も悪いことではありません。胸を張って「節税しています」と言ってまったく何の問題もありません。法律や通達により税務上認められている範囲内で税負担を最小化することは納税者の権利です。
 税理士としても顧問先のために合法的に節税対策を行うことはごく当たり前のことです。冒頭に書いた節税対策本に書いてあるようなことは税法を勉強していれば当然の知識ですので、税務の専門家としてクライアントにアドバイスすべきことだと思います。もしもそういった知識が不足していた、又は知っていたがアドバイスしなかったということであればプロとして非難を受けても仕方のないことでしょう。

「租税回避」とは何か

脱税と節税の違いについてはお分かりいただけたと思います。脱税はクロであり、節税はシロです。もうひとつ税務の世界でよく使われる用語に「租税回避」というものがあります。租税回避は脱税と節税との境目のグレーゾーンに位置する行為です。租税回避は否定的なニュアンスで報道されることが多いため、違法な行為だと認識されている方も多いかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。
 節税は合法的でかつ法律の想定する範囲内で合理的な取引を行うため、問題になることはありません。それに対し、租税回避は法律が想定していない形式を利用して、通常は行われないような合理性のない取引形態を用いて税負担を最小化させようとするものです。すべての経済行為を法律で規定することは不可能ですから、税法も完全ではなく想定外の取引が生じます。
 税の世界には「租税法律主義」という考え方があり、これは法律の定めがなければ課税されることはないという大原則ですが、現行の法律で違法と規定されていない取引は、この考え方のもとでは合法になります。通常行われないような取引形態により税負担が減少していた場合、課税当局は「租税回避行為」を理由として追徴課税を行う場合があり、そこに『見解の相違』が生まれ、争いに発展します。

税負担を限界まで減らすためにはどうしたらいいか

税法の想定していなかった、いわゆる「法の網の目をくぐった」租税回避スキームを何とか封じ込めたい課税庁と納税者の争いは、過去から続いてきました。以前は「見解の相違があり、納得はいかなかったが税務当局の指摘に従った」いうようなコメントをよく目にしましたが、最近は逆に異議申立て・審査請求・訴訟などで堂々と当局と争っている例を多く目にします。さらに報道の内容を見ると国側の敗訴、処分取消しとなった事例が続出しています。例えば、

  • 武田薬品工業の移転価格税制を巡る異議申立てで、977億円の申告漏れ所得を取り消し
  • 都内企業経営者の相続税調査で50億円の追徴課税を取り消し
  • 海外の不動産投資事業を巡り愛知県内の投資家に対する30数億円の申告漏れを取り消し

などがありました。
 また、昨年2月には大きな話題となった「武富士贈与税訴訟」で国側が最高裁で敗訴し、2000億円もの税還付を行っています。この武富士事件では、最高裁はこのスキームは「租税回避行為だった」と認定したものの、現行の法律で規定されていない税負担の回避に対しては立法で対処すべきで、安易な法の拡張解釈による課税は許されないと結論付け課税を取り消しました。
 税負担を限界まで減少させるために租税回避のスキームを実行しようとするのならば、万全を期して勝ち戦とするため、一般の人が知り得ない情報を収集し、知識と知恵を総動員して、さらには争いとなるリスクを許容した上で勇気ある行動を起こすしかないのではないでしょうか。

税務総合戦略室便り 第38号(2012年06月01日発行分)に掲載

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