純資産価額方式による純資産価額は、賃借対照表の「資産」を相続税評価額に換算し直した「総資産価額」から、同じく相続税評価額に換算し直した「負債価額」を差し引いた価額を基礎として計算されます。 賃借対照表の資産の30億円が、土地や有価証券、借地権の含み益などの相続税評価額で40億円になっていたとしますと、差額の10億円に対して58%(評価差額に対する法人税等の42%控除後)の5・8億円が、資産の額に加算されることになります。 このように、かなり以前に取得した会社が所有する土地、有価証券などがあって、多額の含み益が発生している場合は、純資産価額が多額になり、純資産価額方式による株価が高くなってしまいます。
会社の業績が良かった時は、法人税等や配当金を支払った後の利益金が利益積立金として累積されます。利益金の約50%が累積されますから、過去に業績の良かった時期が長期間続いた場合は相当に高額になります。年間の利益金が1億円とすれば約5000万円が累積されるため、20年間で10億円の純資産価額になります。 特に、中小企業は信用力が弱く、外部からの資金調達に限界があるため、支払配当金や役員報酬、役員賞与を低く抑えて、内部留保額の蓄積に努力するのが通常です。その結果、内部留保額が多額となり、「優良な会社」となって株価が高くなるのです。
類似業種比準価額方式による類似業種比準価額は、上場会社(黒字会社)の類似業種別の株価および一株あたりの支払配当額、利益金額、簿価純資産額と、株価を計算する中小企業の一株あたりの各々とを比準して計算されます。
上場会社の株価の上昇がそのまま中小企業の株価に反映されるため、会社の規模や業績に関係なく、影響されて株価が高くなってしまいます。 また、上場会社の株価は業種間で大きな差異がある場合がありますので、株価の高い業種では、高額な株価がそのまま中小企業の株価にも反映されてしまいます。
上場会社は資本金が大きいため、資本金に対する支払配当金の割合は平均的には数%から10%前後程度が多数でしょう。 しかし、中小企業は資本金が小さいため、支払配当率が時には30%から50%になってしまっているケースがあります。そうしますと上場会社との比準値が数倍以上になり、株価が高くなる原因になってしまいます。
中小企業は資本金が小さいため、発行済株式数も少数です。よって、高額な利益を計上しますと、比準値が上昇して株価が高くなります(数値が三倍されますからさらに高くなります)。一方、上場会社は大きな資本金に対して利益が比準されるため、中小企業に比べて数値の上昇は小さいのです。
純資産価額方式と同じように、一株あたりの数値が計算されますが、株式発行数の少ない中小企業の比準値が高くなるのは、利益金額の場合と同じ理由になります。
税務総合戦略室便り 第42号(2012年10月01日発行分)に掲載
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