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元国税調査官による資産税解説 第十二回 
相続税調査実績

第42号(2012年10月01日発行分)
元国税調査官・税理士
黒崎 俊夫

先月、こちらの紙面で譲渡所得の調査事績を掲載させていただきましたが、今月は相続税の調査事績を紹介いたします。

A 被相続人 甲

  • 年齢 70歳
  • 職業 会社役員

B 相続人

  • 配偶者外2名

C 相続開始日

  • 平成4年

D 当初申告の内容

  • 総遺産価額 4億円
  • 相続税額  5000万円

E 調査選定事由

  • 経常収入に比し預金過少 (毎年の経常収入が約1500万円あ   りながら、現預金の申告が少ない)
  • 譲渡所得の化体財産の解明

F 準備調査

  • 平成元年に不動産の譲渡収入が1億円もありながら、預貯金等の不表現資産の申告額が約5000万円と過少であり、申告除外が想定された。
  • 申告書に記載のあったM銀行に対する預金照会の結果、多額の家族名義預金の存在と、平成2年以降、多額の預金が現金で出金されている事実が把握された。

G 臨宅調査

  • 経常収入の管理運用状況について相続人に聴取したが、「お金はすべて、亡くなった父が管理しており、詳細なことはわからない」との回答しか得られなかった。
  • そこで、居宅内の現物確認調査を実施したが、申告書に記載された通帳等は把握されたものの、それ以外の通帳、証券類は発見できなかった。
  • ただし、居間の電話器の脇に置かれていた携帯用の電話帳を確認したところ、債券発行銀行Nの名と担当者らしき人間Pの名前が記載されているページがあり、N銀行との取引が推定された。この件についても相続人は「この字は父のものであり、全く知らない」との回答であった。

H 金融機関調査

  • 翌日、N銀行に臨場し、担当者と思われるPに面会を求めた。Pは既に転勤していたが、Pは当時の渉外担当者で現在はQが引き継いでいることがわかった。Qに当銀行と甲との取引状況について、説明を求めたところ、当初は渋っていたものの、Qの担当者手控と渉外課長が管理している「顧客カード」を提出させることができた。
  • 顧客カード等の記載から、甲に係る割引現物債券(無記名)の取引実態が把握され、購入伝票や償還伝票を確認した結果、甲死亡後は配偶者が乗換手続きを行っていること、および現在において未償還の現物債の記番号を特定するに至った。
  • 時間は既に17時を回っていたが、その足で再度相続人宅へ臨場し、N銀行との取引の事実と、現物で保管しているはずの債券の有無について、厳しく追及した。
  • 粘り強い説得の結果、配偶者の寝室の洋服箪笥の中に、紙袋に保管された未償還の債券十数枚と、償還計算書等の帳票、その他家族名義の定期預金証書等を確認することができた。
  • これら債券類と家族名義預金については、上記F-2の多額の不明出金と日付、金額ともほぼ一致し、総額で1億円を超える除外財産を把握することができた。これらについて、配偶者から「無記名であるから容易に発見されないと思い誰にも言わなかった」「その他預金についても相続人名義なので申告から除外した」旨の申述を得た。

相続税の調査担当者は、今回のケースのように、電話帳とか、被相続人の手帳、日記のようなものを端緒に、申告漏れ財産や、公表外金融機関を把握することがあります。  今の時期は相続税調査の最盛期です。なにかの参考になればと思い、紹介させていただきました。

税務総合戦略室便り 第42号(2012年10月01日発行分)に掲載

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