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国際的な電子商取引と消費税―電子書籍の販売とOECDガイドライン―

第42号(2012年10月01日発行分)

執筆者3

電子書籍の販売と消費税

楽天はカナダの電子書籍事業会社Kobo社を昨年買収し、この子会社を通じた電子書籍の配信サービス事業を本年6月から開始しました。その理由として、カナダからインターネット経由で日本の消費者に直接販売(配信)した電子書籍には消費税はかからないことがあげられます。
 しかしながら、楽天の目的はおそらく消費税回避ではないでしょう。アマゾンなどの海外ネット販売大手と競争条件を同一とするためにおこなったものと思われます。言ってみれば、来るべき消費税大増税により拡大する競争阻害要因の排除にあると考えられます。
 実は、アマゾンなど海外のネット販売を通じて買った電子書籍には消費税はかからないのです。一方、国内で販売(配信)している事業者から電子書籍を買うと消費税がかかるのです。そうすると、海外のネット販売事業者から買うと消費税分だけ販売価額は安いことになります。これでは、国内の事業者は海外の事業者に価格競争で負けてしまうことになります。海外からの配信サービスの提供は民間の自力救済でもあるわけです。

わが国の消費税法(現状)

わが国の消費税法では、電子書籍のようなデジタル財の配信サービス取引については、サービス供給地で課税することになっています。
 海外から(直接)日本の消費者に音楽コンテンツや電子書籍などのデジタル財を配信する場合には、事業者が海外にいるので、たとえデジタル財の提供地は日本であっても課税のしようがないため、「不課税」ということになっています。
 インターネット経由で個人がデジタル財の配信サービスを海外の事業者から受ける場合、税関を通らないので消費税を課税する方法はないのです。
本人の自主申告ということも考えられますが、実効性には乏しいでしょう。とはいえ、国内取引と国外取引との間での課税の中立性を欠き、公平性を損なうばかりか、一国の税収にも影響を及ぼすことになり、最終的には国家間の税収配分という究極の問題へと繋がっていきます。

OECDガイドライン

国境を越えて事業者から直接個人にデジタル財の取引が行われると、消費税の課税が困難になるといった国際的な電子商取引への課税問題は、10年以上前から各国の課税当局間で話題に上り、国際的な場(OECD租税委員会)で検討が重ねられてきた問題でもあります。
 2001年に公表されたOECDガイドラインでは、上記の対消費者取引に関して、

  • デジタル財のようなサービスの場合、サービス提供者の居住地ではなく、消費者の居住地を消費地とすることが望ましい
  • 暫定的な措置として、外国の販売事業者を消費地国の税務当局に登録させることで納税義務者にする登録制の導入 などの新たな考え方が示されました。

これを受けて2003年7月、EUではデジタル財の国境を越える取引への課税対策としてe-VATが適用され、消費国での税収確保に成果を挙げているとのことです。本当かな? 執行上の問題はないのかな?

今後、わが国では

消費税は国内で消費されるサービスに対して負担を求めるものですが、外国法人によって海外から提供されるサービスに関しては、いまだにわが国では消費税は課されていません。
 このことが、先に述べた電子書籍の販売など、様々な分野で問題を引き起こしています。例えば、リスティング広告事業において、アドワーズ(グーグル系列)の広告費の請求者はアイルランドの外国法人となっています。その請求書を見ると、消費税がかからないと明記してあります。一方、国内の事業者であるヤフーの場合、消費税がかかることが明記してあります。結果、アドワーズは消費税分だけ安いことになります。このような国内の事業者にとって不利な競争条件は、すべてのネットサービスに通じています。
 去る6月29日、財務省はようやく重い腰を上げ、海外からのインターネット配信を通じた電子書籍などの販売に消費税を課税するための研究会を立ち上げることを明らかにしました。具体的な制度設計を行い、消費税を8%に上げる平成26年には課税を開始し、課税の公平を図る考えだと伝えられています。

税務総合戦略室便り 第42号(2012年10月01日発行分)に掲載

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