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自社株対策とは何か(前編)

category: 自社株
第43号(2012年12月01日発行分)

執筆者11

オーナー経営者が自社株式を相続まで所有し続けると、自社株式の財産額が多額になり、高額な相続税の負担となって納税が困難になったり、自社に買い取ってもらうことによって、会社に多額な流動資産の悪化を招くことになります。
 また、多額な自社株財産と他の財産との割合に偏りが生じて、会社の承継者の取得する自社株式が少なくなり、他の相続人から株式を買い取る等の多額な資金負担が必要となる場合があります。さらに、会社の使用している個人所有の不動産等がありますと、遺産分割の問題が発生したりして、相続が複雑化し、トラブルに発展してしまうことが多くあります。
 よって、オーナーにとっては生前中に所有する株式の大部分の名義を、後継者(相続人および他人も含めた)の名義へと変更しておくことが最も大切なことになります。このように、オーナーが所有する自社株の大部分を生前中に後継者名義にしておくことを実行するのが『自社株対策』なのです。

1 自社株の名義を変更する方法

(1)自社株を後継者が株主である会社に譲渡し、後継者が間接所有する方法

後継者が株主の会社(持ち株会社)を設立しておき、オーナーの所有する株式を譲渡する方法です。また、すでに別会社がある場合は、その会社の株価が低ければ、事前に後継者に株式を贈与し後継者の会社として活用することも可能です。
 譲渡価格は「時価」になります。非上場法人へ売却する場合、流通している時価はほとんどありませんから、税法で定められている価額になります。通常、この価額は相続税評価総額よりも高額な価格となります。そして、この時価をできるだけ低く引き下げることは、相続税評価総額を引き下げることよりも困難なのです(これらの詳細は次回以降にご説明いたします)。
 したがって、自社株を購入する会社は多額の購入資金が求められるため、相当の準備が必要になります。一般的には、購入資金は本体会社か金融機関から借入しますので、返済計画を立てなければなりません。返済資金の捻出のために何らかの事業を行うことになりますから、新規事業や本体会社からの事業譲り受け等を検討することになります。また、株式を譲渡したオーナーは多額の現金財産を取得することになりますので、留意が必要です。
 以上のように、株式が多額となる場合、後継者が株主の会社に譲渡する方法は借入金の返済やオーナーの現金財産などの問題が大きくなりますのでご注意下さい。そのため、こちらの方法は他の手段と併用して用いられているケースが多いようです。

(2)自社株を後継者たる相続人

または他人の後継者に譲渡する方法
 相続人または他人の後継者への譲渡価額は、非上場株式の原則的評価方法による相続評価額が基本となります。適正価格の決定は、税法上の低額譲渡によるみなし贈与規定(相続税法7条)の時価の2分の1以上の規定を踏まえて行います。ただし、時価の2分の1以上であっても、同族会社の行為計算が不当であると判断された場合は、時価で譲渡したものとみなされるので注意する必要があります。
 この考え方は、相続税評価額というものは、あくまでも相続という静止した時点における会社の評価としての株式評価であるという考え方であり、相続税や贈与税を計算するための評価であるとするものです。相続税評価額は市場に流通する株式の売買価格のような流動的な価格とは別なものという考え方があるのです。
 そのため、相続税評価額と時価との乖離が大きくなると、流動的価額である時価を中心として考えるべきとする議論が起こるのです。相続税評価額をできるだけ引き下げ、低くして譲渡したいとなると、時価との乖離が大きくなるため、この問題が提起される懸念が生じます。
 また、適正な譲渡価格が決定されたとしても、株式数が多ければ譲渡価格は多額となり、後継者は多額の買い取り資金が必要となります。借入するにしても、返済するための原資の用意が困難になると考えられますので、資金繰りの十分な検討が必要になります。
 ただし、後継者に返済能力や購入資金がある場合は一考することになります。

(次回へ続く)

税務総合戦略室便り 第43号(2012年12月01日発行分)に掲載

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