自社株対策とは何か(中編II)
3 株価の引き下げ対策(その一)
(1)後継者の会社に高収益部門を譲渡する
- ①後継者を株主とする、事業を譲り受けるための会社を設立します(既存の後継者の会社を活用することも可です)。
- ②本体会社の高収益部門の資産、負債、およびすべての事業を譲渡します。この場合の事業には、得意先、仕入先、預金、借入金、機械等および従業員を含みます。
- ③譲渡する資産、負債は、個々の資産、負債の時価で評価し決定します。 ただし、土地等で多額の譲渡金が生じるような場合は賃貸にする方法をとります。また、土地は賃借し、建物は譲り受けて所有としますと、借地権の問題が発生しますので留意が必要です。
- ④債権、債務の譲渡は通常の売買となりますので、債権者のおよび債務者の承諾が必要になります。
- ⑤高収益部門の事業譲渡は、通常、会社法上の事業の重要な一部の譲渡に当たるため、株主総会の特別決議(※)による承認が必要です。
※株主総会の特別決議とは
総株主の議決権の総数の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決数の3分の2以上による決議のことです。
- ⑥のれん(相続税評価通達では営業権)について
高収益部門の営業権の見積もり計上を行うかどうかについては意見が分かれています。通常は営業権の存在を認めても、それを認定し、課税しているケースはありません。ただし、将来的には営業権への課税について整理されることが予想されます。したがって、相続税法上の財産評価通達の営業権の評価を行い、計上しておくべきと考えます。
営業権を認定し本体会社に支払いますから、本体会社の収益になりますが、後継者の会社においては5年間で定額償却されます。
- ⑦事業譲渡は株主総会の承認を得た後に、「事業譲渡契約書」を締結し、実行されます。
- ⑧事例と効果
ⅰ本体会社の株価(大会社)

ⅱ事業譲渡(後継者の会社)

ⅲ事業譲渡後の本体会社の株価

ⅳ効果
株価が1万8728円から5461円に下がります(△71%)。
- ⑨その他の留意点
ⅰ株価が下がった時点で、できる限り後継者に株式を生前贈与します。
ⅱ一定規模以上の会社は公正取引委員会への届出が必要となります。
(次回へ続く)
税務総合戦略室便り 第45号(2013年03月01日発行分)に掲載