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元国税調査官が語る国際税務解説 第十六回 
国外財産と税務

第45号(2013年03月01日発行分)

その他

1 課税関係の基本的な考え方

最近、税務相談の中で「海外の現預金を国内に持ち込みたいのですが、その際、課税関係は生じますか?」という趣旨の質問がよくあります。
「お金を海外から国内に持ち込む」=「課税」と考えている方が多いようです。当然、海外にある金銭を国内に持ち込むだけでは、何も課税関係は生じません。重要なポイントは、日本に持ち込む海外資金の原資は何から生じたものなのかということです。
 たとえば、海外から持ち込む現預金の原資が海外不動産の賃料収入や海外ファンドの売却益にかかるもので、日本で申告をしていないものであれば、過去に遡及して修正申告書を提出しなければなりません。
 しかし、海外からの受金が過去に海外口座に送金した金額の単なる戻し分であったり、既に日本で申告済の収入にかかるものであれば、日本に送金した場合であっても課税関係は生じないため、全く問題はありません。

2 国外財産の把握

日本の税務当局は、国外送金調書により100万円超の海外送受金については把握しています。したがって、海外送受金の金額が大きい場合には、納税者に対し「国外送金のおたずね」という文書を発送するケースがあります。
 海外との送受金に関する取引について日本での税務申告が適正になされていれば、正直に返答するだけですが、脱税の意図がなくても、海外口座の預金に少額の利息が生じ、その分の申告を失念しているというケースがよくあります。日本では、預金利息は源泉徴収されるため確定申告の必要はありませんが、海外口座の利息は源泉徴収されませんので確定申告をしなければなりません(少額であれば、税務当局も修正申告を提出させるようなことはないと思いますが……)。
 このおたずねは、海外の収入について適正に所得税の申告がなされているのかどうかを確認するために行っているのですが、同時に、相続税の課税漏れを防止するため、長期的な視点で資料が収集されているという側面もあります。海外に所在する財産であっても相続税の課税対象に該当するにもかかわらず、海外財産に関する相続税の課税漏れが頻発しているという実態があるためです。
 今後は「国外財産5000万円超報告制度」も導入され、租税条約による情報交換規定も強化されていますので、国外財産についてはこれまで以上に税務当局の目は厳しくなっていくものと思われます。

3 国外財産の戦略的な管理・運用

では、国外財産の保有について税務面で有効かつ簡単な例を考えてみたいと思います。

  • ①将来的に多額の運用益が見込まれる海外ファンド等を保有している場合
     居住者である場合、ファンド等の売却益や解約益に対して日本の税率で課税されるため、受益時を見越して非居住者になるという方法が考えられます。たとえば、日本企業の従業員が海外の子会社に一年以上出向することになった場合、その出向している間にファンドを売却するという方法です。この場合、キャピタルゲインについて非課税の国の居住者となれば、全世界で課税されないケースも生じることになります。
  • ②富裕層であり、かつ、国外財産を多数保有している場合
     国外財産を多数保有している場合、海外に子会社を設立し、子会社に国外財産を保有させることも考えられます。子会社設立国の税率が低い場合には、国外財産から生ずる利益に対する税コストを削減することができます。
     また、富裕層の場合、日本に法人を有しているケースも多いので、海外子会社の出資者を個人ではなく当該内国法人にすることも一つの方法です。個人の出資の場合、海外子会社からの配当は総合課税となり、所得税の累進税率(最高50%)が適用されることになりますが、日本の内国法人が出資者の場合には、海外子会社からの配当については配当額の5%分のみの法人税の課税関係で終了するからです。
     ただし、海外子会社を理由するスキームについては、タックスヘイブン税制の適用に注意する必要があります。

税務総合戦略室便り 第45号(2013年03月01日発行分)に掲載

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