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元国税調査官が語る国際税務解説 第十七回 
消費税の複数税率制度と各国の状況

第46号(2013年04月01日発行分)

その他

1 複数税率制度とは

現在、消費税率アップに伴う複数税率制度の導入について議論されています。
 複数税率制度とは、食料品等やガス・電気代等の生活必需品には通常の税率より低い税率を適用し、一方、ブランド品や貴金属等の贅沢品については高い税率を課すことで、税の逆進性を緩和しようという制度です。
 海外では、多くの国が複数税率制度を採用していますが、日本では、非課税制度(土地や有価証券の譲渡や社会保険診療等のように消費の概念になじまないものや政策的な観点から消費税を課することが適切でないものについて消費税を課さない制度)の規定は存在するものの、複数税率制度は現在採用するに至っていません。
 ヨーロッパ諸国の状況は以下のとおりですが、やはり、生活必需品については軽減税率を適用しているケースが多いようです。
イギリス:標準税率20%、食料品・水道水・新聞0%
フランス:標準税率19.6%、外食7%、食料品5.5%、新聞・雑誌・医薬品2.1%
ドイツ:標準税率19%、食料品・新聞・雑誌・書籍7%

2 複数税率制度の問題点

複数税率制度は一見、税の逆進性にも配慮され、メリットばかりが強調されがちですが、良い面ばかりではありません。問題点としては、

  • ①軽減税率の対象となるものを法律上定義しなければならないこと
  • ②レシート、請求書等の記載内容や消費税の計算が複雑になるため、事業者の実務上の負担が増大する恐れがあること等が挙げられます。

①についてですが、食料品に軽減税率を適用する場合、低所得者層への配慮という政策目的に照らせば、日常的な食料品に限定することが望ましいと考えられます。したがって、法令や通達で日常生活に必要な食料品とそうでないものとの間に線引きをしなければなりません。
 例えばフランスでは、チョコレートはカカオの含有量で標準税率(19・6%)か、軽減税率(5・5%)かに分かれています。これは、カカオの含有量が50%以上か否かによって、贅沢品か否を区分し、税率に差異を設けています。また、ドイツでは同じハンバーガーでも、店内飲食用は標準税率(19%)、持ち帰り用は軽減税率(7%)となっています。これは、店内飲食の場合、食料品の提供であっても飲食サービスの色合いが強いため、軽減税率の適用から除外しているのです。
 もし、前述したドイツの制度が日本で導入された場合、ファミリーレストランや居酒屋の客は減少し、家で食事を済ませようとする方が増加するものと考えられ、業界団体からの反対も予想されます。
 したがって、複数税率制度はメリットよりデメリットの方が多く、税源確保のための有効な手段にはならないという専門家の意見もあります。

3 インボイス方式

また、複数税率制度導入の際、よく議論されるのが諸外国で採用されているインボイス方式です。これは、インボイスの保存がなければ仕入税額控除を認めないという制度ですが、日本における仕入税額控除の適用要件である「帳簿及び請求書等の保存義務」とは大きく異なります。
 海外のインボイス方式は、一般的に以下のような特徴があります。

  • ①免税事業者はインボイスを発行することができないため、益税が生じないこと(日本の場合、免税事業者からの仕入についても仕入税額控除が可能なため益税が生じます)。
  • ②インボイスに消費税額を記載しなければならず、また、記載された金額のみが仕入控除の対象となるので、複数税率制度が導入された場合でも売り手と買い手の消費税額が完全に一致すること(日本の場合、請求書等に消費税額を記載することは義務付けられてはいないため、売り手と買い手との間で消費税について差異が生ずる可能性があります)。

しかし、インボイス方式は、専用の伝票に記載する必要があるために事業者の事務負担が大きくなることや、免税事業者からの仕入は税額控除の対象にならないため、免税事業者が取引関係の中から排除されやすいこと等がデメリットとして挙げられます。

税務総合戦略室便り 第46号(2013年04月01日発行分)に掲載

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