新聞・テレビ等のマスコミ報道で従業員による多額の横領・着服事件を目にする機会があります。報道の内容を注意深く見ていると、不正発見の端緒が国税局や税務署の調査によるものである事例が意外と多いことがわかります。
なぜ今まで気づかなかった社内不正が税務調査で発覚するのでしょうか?
税務調査の目的は申告された所得金額が正しいものであるかどうかを確認することです。そのために税務調査で行うことは、大きく分けると、
ということになりますが、この手続は社内不正防止のために企業が行う監査と同じだと言えます。
であるからです。
上場企業はもちろんのこと、中小企業においても社内不正を防止するための監査を行っているケースは多いのですが、残念ながら不祥事は後を絶ちません。なぜ、社内の監査では不正を発見することができないのでしょうか?
社内監査にはいくつかの問題があると考えています。
一つ目は【気持ち・マインドの問題】です。社内監査の場合、「身内が身内を暴く」という状況になりますので、どうしても厳正な監査というものは実行しづらいものです。さらに、確実な証拠のない段階で社内調査を行えば、会社の雰囲気・人間関係を壊してしまう恐れもあり、着手するためには勇気が必要です。
また、幹部社員・役員など大きな決裁権限のある場所にこそ、実は不正リスクが存在するのですが、社内の調査で上司であるそのような権限のある場所に立ち入ることは難しいと思います。
二つ目は【能力の問題】です。社内調査を行う社員は調査のプロではありませんので、複数名の共謀による横領など、複雑化した手口の不正を発見することは困難です。
また、不正を行っている者は当然に証拠隠滅を図りますので、社内調査をやると決めたら人材を集中投下して迅速に行動しなければなりませんが、内部の監査ではマンパワーを大量には投下できず、集中した調査が難しいという現実があります。
税務調査で今までわからなかった社内不正が発覚するのは何故でしょうか?
会計士など専門家の世界では、監査は「職業的猜疑心」を持って行うことが必要だとされていますが、この「職業的猜疑心」を持って行っているのがまさに税務調査です。税務調査はどうしても性悪説で行われますので、調査を経験された方のなかには、正しい申告をしているつもりなのに、「疑われている」気がするという不快感を持たれた方も多いのではないでしょうか。
税務調査では事前連絡なしに抜き打ち調査を行うこともありますし、取引内容に不審点を感じれば「反面調査」を行うこともあります。
さらに、帳簿と証拠書類の照合にとどまらず、よく言う「ヒト」「モノ」「カネ」を連動させて考え、納得のいくまで現物を確認したりすることにより、辻褄の合わない事実が浮かび上がることがあるのです。
私共『税務総合戦略室』では「税務リスク防衛パック」として税務リスクから会社と経営者の個人資産をお守りするためのサービスを行っております。その中の主要サービスのひとつが【税務予防調査】です。複数の元国税調査官が実際の税務調査と同様の手法でお客様の財務状況を確認することで、企業に潜んでいる「税務リスク」「社内不正リスク」を診断するという内容です。
本番の税務調査における指摘リスクを抽出し、その税務リスクを軽減することを主目的としていますが、税務調査の形でチェックを行うため、従業員に不信感を抱かせることなく社内不正の調査や不正の温床となる処理の検出を行うこともできます。
この【税務予防調査】によって多額の横領が発覚した例があります。
ある企業は会計事務所出身の経理担当者に長年、財務・経理処理の一切を任せきりにしていました。私共は調査が始まってまもなく、グループ会社間で意味のない迂回処理が多数行われていることを不審に思い、その経理担当者A氏にヒアリングを行いましたが、納得のいく説明は得られませんでした。調査が進んだある日、A氏は書置きを残し失踪してしまいました。
調査の結果、5年あまりで総額2億円を超える横領が行われていたことがわかりました。後日、当人は警察に出頭し自首しましたが、着服した金銭は個人的な遊興費やギャンブルに消えていて、回収は絶望的です。
不正を行っている人間は、不正が発覚しないように複雑な経理処理を行って証拠隠滅を図ります。私達は帳簿監査を行っていながら何年間にも渡って横領を見抜けなかったその企業の顧問会計事務所にも責任の一端があると思っていますが、性悪説に基づかず、不正発見を目的としていない通常の会計監査ではこのような横領を見つけるのは難しいだろうなと感じているのも事実です。
社内不正が発覚した場合、大切な会社の財産が失われる痛手はもちろんですが、信頼していた従業員に裏切られた経営者の方の精神的なショックも非常に大きいものです。
前述した企業のほかにも、右腕と信じていたナンバー2の役員に取引先との共謀による横領を行われた会社の社長がガックリして体調をひどく崩され、ついには入院してしまったという例がありました。
不幸な社内不正を防ぐにはどうしたら良いのでしょうか。ひとつには会社の内部牽制制度の充実があげられます。例えば、
などが考えられます。
人間は弱い部分がありますので、簡単に不正を行える機会があれば、「出来心でつい」ということにもなりかねません。経営者は不正防止のためのシステムを構築しておかなくてはなりません。
しかしそれだけでは不十分です。大切な会社を守るためには、やはり「職業的猜疑心」を持って調べる第三者的立場の人間が絶対に必要です。
私達、『税務総合戦略室』は長年国税当局で実際に税務調査を数多く行ってきたメンバーで組織しています。調査の現場で多くの社内不正事例を見てきました。私達の感覚では業績が急成長している企業ほど多くの社内不正リスクが存在していると思います。経営資源を成長のための営業活動に注力し、会計は二の次だというケースが多いからです。
【税務予防調査】は企業の税務リスク・社内不正リスクを発見し、軽減するための健康診断です。専門分野は専門家に任せるのが一番です。調査のプロフェッショナルである元国税調査官の集団が、通常の会計監査とは異なる視点で行う定期的な診断により、大きな安心と不正の起こりえない万全な企業体質を築くためのお力となります。
税務総合戦略室便り 第46号(2013年04月01日発行分)に掲載
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