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元国税調査官が語る国際税務解説 第十九回 
多国籍企業に見られる節税対策

category: 節税国際税務
第48号(2013年07月01日発行分)

その他

1 多国籍企業の節税

最近の新聞報道等で御存知の方も多いと思いますが、アップル、グーグル、アマゾン、スターバックス等の多国籍企業の節税対策が問題視されています。
 これらの企業が行っている節税対策というのは、簡単に言うと、各国の税率の差異を利用して、税率の低い国に所得を移転させるというスキームです。日本では、税金を減少させることは、合法的であってもいいイメージを持たれることはありませんが、日本企業に比べ、外資系企業は税金を明確にコストとして考え、税引き後のキャッシュの最大化を目指す傾向にあります。

2 スターバックスの例

新聞報道によると、英国スターバックスの例では、コーヒー豆の仕入について、スイス法人を介して行うことによって英国より税率の低いスイスに利益を移転し、また、コーヒーの製法等の特許を英国より税率の低いオランダ法人に所有させることにより、利益の移転を図っていたようです。
 今回の海外の低税率国を使って利益を低く抑える手法ですが、一般消費者から反発が起こったため、英国スターバックス側が不買運動を恐れ、自主的に税金を納めることになったようです。日本では考えられませんが、法律違反ではなく道徳違反で糾弾されていたのです。  一般的に、このように低税率国に利益を移転する行為を防止する税制として、日本を含め多くの国に移転価格税制やタックスヘイブン税制が存在します。これらの税制は、関連者間の取引価格を恣意的に操作することや、税率の低い国の子会社に利益を移転することを防止するための規定です。
 したがって、当該税制がうまく機能していれば、英国税務当局もこのようなスキームを税務調査で否認できるはずなのですが、これらの巨大企業は税務の専門家の助言により、法形式上は否認されないように高度なスキームを構築していたことが予想されます。
 たとえば、海外に業務機能がないペーパーカンパニーのような拠点を作り、そこに利益を付け替えることは税務調査で指摘を受ける可能性はありますが、これらの企業は、税務上問題にならないように低税率国の拠点に一定の機能を持たせていたものと思われます。特に、移転価格税制における特許権等の無形資産の使用料や譲渡価格についての独立企業間価格の算定は難しい側面があり、税務上、否認することも困難になっています。
 そのため、このような動きに対して、先進国で構成されているOECDにおいても、グローバル経済にあった国際的な課税ルールを協議するための行動計画の策定が進められることになっています。
 先進国としては、低税率国に税率を上げるよう求めていくことになると思いますが、各国の税制はそれぞれの国の方針や考え方によって大きく変わってくるため、先進国が一方的に低税率国に税率を上げるように強制することは難しいでしょう。
 国際取引においては、一つの取引に対して複数の国が関連する場合があり、また、上述したように各国には異なる税率や税制が存在するため、今後も納税者と税務当局の知恵くらべは続いていくものと思われます。

3 まとめ

企業にとって、将来の生き残りのために節税対策を講じ、少しでも多くの資金を会社内に留保しておくことは重要です。一方、国にとっては税収の減収は国家の衰退につながります。当然、故意に売上を除いたり、架空の仕入を計上することは問題外ですが、法律の許容範囲内で節税対策を行うことは納税者の権利であり、積極的に行うべきだと考えます。
 税務においては法律上グレーゾーンの部分が多く存在しますが、租税法律主義を基盤としている以上、納税者にとっての判断基準は税法に頼らざるを得ないことになります。したがって、上記多国籍企業の節税のように、税務当局は税務調査で否認できないと考えるならば、無理な課税をせず、納税者の法的安全性や予見可能性を確保するためにも税制改正等で対処する必要があるのではないでしょうか。

税務総合戦略室便り 第48号(2013年07月01日発行分)に掲載

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