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元国税調査官が語る国際税務解説 第二十回 
オフショア地域に海外子会社を設立することの危険性

第49号(2013年08月01日発行分)

その他

1 オフショア地域への法人設立

最近、インターネット上で海外法人設立代行業者のサイトをよくみかけることがあります。これらのサイトを見ていると、いつも気になることがあります。それは、代行業者が、オフショア地域での法人の設立代行に際して、日本の「タックスヘイブン対策税制」についてしっかりとお客様に説明をしているのかどうかという点です。  タックスヘイブン対策税制は本コラムで何度か取り上げていますので、詳細は割愛しますが、簡略しますと、日本の居住者が税負担率20%以下の国に子会社を設立した場合、その子会社の利益のうち出資割合相当分を、日本の居住者の所得とみなして日本で課税するという制度です(当制度は内国法人にも適用されますが、今回は居住者であることを前提としています)。  これは、低税率国の子会社に利益を留保することを防止するための制度です。したがって、日本の居住者が100%出資の子会社を香港等に設立した場合、香港等子会社の利益の全額が当該居住者の所得となり、日本で雑所得として申告をしなければなりません。  実体がある法人(適用除外基準を満たした法人)については、課税されないという特例もありますが、居住者である個人がオフショア地域にプライベートな法人を設立する場合は、この基準を満たせるケースはほとんどないと思います。

2 海外子会社の株主

ここで問題になってくるのは、海外子会社の株主を誰にするのかということです。  当然、子会社に出資するのは、配当を収受することになる実質的なオーナーやその親族となるのが通常ですが、株主になった場合、上記タックスヘイブン対策税制により、海外子会社の利益について日本で申告しなければなりません。  一般的にオフショア地域と呼ばれる低税率国にプライベートな子会社を設立する目的は、税金対策であるといわれていますが、日本で課税されてしまうと節税対策にはなりません。そのため、よく利用されているといわれているのがノミニー制度といわれるものです。  このノミニー制度とは、実質の株主が表面上現れないように、名目上の株主を置くことをいいます。これは、真の株主の情報を守るという趣旨のもと、香港等では合法的な行為であるため、その点は問題ありません。しかし、日本のタックスヘイブン対策税制に照らし合わせて考えた場合、税務上、非常に危険です。なぜなら、同税制での株主の判定は、名義も当然重視されますが、適正な課税を確保する必要性から、最終的には実質株主で判断することになるからです。  ノミニーとは名目上の株主であり、実質の株主ではありませんので、これを理解した上で、居住者本人が自らを実質株主として海外子会社の所得を日本で合算して申告していれば、当然問題はありません。  しかし、そのようなケースは少ないと思われます。大部分の方が、名義上の株主は自分ではなくノミニーであるという認識や、日本の税務当局が海外子会社の実質株主が自分であることを把握できないだろうという安易な考えを持っているのではないでしょうか。  確かに、税務当局の情報網には限界があるため、実質株主を把握できないケースが多いと思いますが、このような行為は重加算税の対象となり、隠匿した金額によっては査察の案件になることも充分考えられます。

3 まとめ

先日、弊社に相談に来たお客様も、某オフショア国にプライベート法人を設立する際に代行業者に設立を依頼したそうですが、上記のような話は全くなかったということで、私の話を聞いて驚いていました。  設立代行業者は、税務の専門家ではないので本当に知らなかったのかもしれませんが、安易にオフショア地域に子会社を設立することは非常にリスクがあるのです。  真の株主というのは、特別な事情がなければ、現状では日本の税務当局も把握することが難しいかもしれませんが、オフショア地域との租税条約締結が現在増加していることから、海外情報の入手手段も確実に広がっていることも事実です。

税務総合戦略室便り 第49号(2013年08月01日発行分)に掲載

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