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成功者になるための法則 番外編1 
お金の怖さ

第50号(2013年10月01日発行分)
エヌエムシイ税理士法人 会長・税理士
野本 明伯

今月号では「私が実践したお金の使い方」の残る4つのポイントについてお伝えしようと思っておりましたが、一旦「私が実践したお金の使い方」を離れ、「お金の怖さ」をテーマにいたします。

社員の突然の失踪

なぜ急に「お金の怖さ」に思いを馳せるに至ったのか。それはあるひとつの事件がきっかけでした。先日、弊社の社員が突如、行方をくらまし、失踪してしまったのです。
 仮にこの社員の名前をAさんとしましょう。Aさんは数年前に大手都銀から弊社に転職してきました。Aさんの仕事ぶりはいたって真面目であり、長年の銀行勤務で培った幅広く、かつ深い知見により、社内でも一目を置かれていました。  だからこそ、Aさんが何の連絡もなしに無断欠勤したことにみな一様に驚きを隠せませんでした。さらにその後も一向に連絡がきません。普段のAさんからは想像できない展開です。私は言い知れぬ不安を抱き、ご家族に連絡をとるように社員に指示しましたが、ご家族ですら、Aさんの行方をつかみかねていたのです。

もう頭を使う仕事には疲れた

失踪から2ヶ月が過ぎたある日、突然にAさんから電話が入りました。その翌日、Aさんは弊社に事情説明のためお越しになりました。会議室で私はAさんと向かい合いました。私はAさんが生きていたことに胸を撫で下ろしましたが、久しぶりに見たAさんは頬がこけ、憔悴しきっているように映りました。長い沈黙の後、Aさんは「自殺まで考えました」と、ポツリ、ポツリと自らの言葉をかみしめるように語り始めました。
 Aさんによると、銀行で働いていた頃にFXや株の信用取引に手を出してしまい、みるみるうちに借金が膨らみ、その穴埋めをしようと銀行を退職し、退職金を借金にあてたということでした。しかし、それでも足りず、借金は膨らみ、今度は住宅ローンの支払いが滞り、最終的には銀行がローンを債権会社に売り渡し、その後、債権会社からの取立に追われ、行方をくらませた、というのが事の真相でした。
 Aさんは一通り話し終えると、退職の意を告げ、深々と頭をさげてきました。「別に気にすることないですよ」と私は慰留しました。
 Aさんほどの経験と知識があれば、いくらだって仕事はあります。しかし、Aさんは頑なでした。最後にAさんが語った言葉が今も忘れられません。それは「これから自己破産の手続きに入り、仕事は新聞配達を住み込みでしようと思っています。せっかくなのですが、もう頭を使う仕事には疲れてしまいました」というものでした。その様は入社当時とは別人でした。

お金に対する無知が招く問題

Aさんは何故このような事態に陥ってしまったのでしょうか。Aさんは人も羨む超一流大学を卒業後、大手都銀で働き始め、順調に出世の階段をのぼって行きました。企業を対象とした資金繰り指導を得意とし、退職前には本店の管理職にまでなっていたのです。一般的に見ればいわゆるエリートです。
 しかし、ある時からゆっくりと歯車が狂い始めたのです。何故そうなったのか。冷たいようですが、私は「あまりにもお金に対して無知すぎる」ことに尽きると思うのです。日本人は正面切ってお金の話を論じることを忌避するきらいがあります。どこか「お金は穢いもの」という風潮があることは皆さん素直に頷けることでしょう。
 ですが、本来、お金自体に「綺麗」も「穢い」もありません。お金はあくまでも道具なのです。にもかかわらず、「お金の話をすること自体」を敬遠してしまうため、Aさんのような金融の世界のエリートですら「お金の蟻地獄」に足をとられてしまうのです。

「お金」に向き合わない日本人

新聞の三面記事をみれば、そのほとんどが「お金」絡みです。つまり、「お金」において誤った選択をとると、時に殺人にまでいきつくこともあれば、詐欺を働くことにもなりかねないのです。それこそ一度きりの人生を台無しにしてしまう魔力を「お金」は持っているのです。
 もちろん逆もしかりです。「お金」について真剣に考え、取り組めば、お金に恵まれ、人生の可能性を広げてくれるのです。「お金で幸福が買えるか」という議論はさておき、少なくとも「お金」によって人生のリスクを減らし、可能性を広げることは確実にできるのです。そのためにはしっかりと「お金」について向かい合い、学ぶしかないのです。
 しかし、ご承知の通り、日本ではそのような教育はほとんどなされていません。その弊害は、多くの日本人の住宅ローンと保険に対するスタンスに顕著に見受けられると私は感じています。

お金に関しても大勢に流されてしまう

多くのサラリーマンが「夢のマイホーム」という甘言に疑問も抱かず、3千万、4千万もの住宅ローンをいともたやすく組んでしまいます。それも30年、40年といった途方もない長期間のローンを組むのです。今や終身雇用や年功序列が崩壊し、リストラや給与カットは日常茶飯事です。確かに今はローンも払えるでしょう。しかし、このような不確実で不安定な時代において、30年、40年後にローンを支払える給与を得ている保証がどこにあるのでしょうか。これはよくよく考えれば恐ろしいことです。
 さらに見方を変えれば、何故に銀行はこぞって「ウチから借りてください」と懸命になるのでしょうか。それは当然、銀行が儲かるからに決まっています。要するに一生かかって汗水たらして銀行を儲けさせているのです。しかし、そのことに気付けない人のなんと多いことでしょう。
 また、マイホームを建てると自分の行動範囲、ひいては可能性を縛ってしまうリスクがあります。たとえば再就職でもマイホームが起点になってしまい、選択肢が限定されてしまうのです。保険も同様です。家族もいないのに高い生命保険に入る方や過剰な保険積立をしている方が非常に多い。マイホームにせよ保険にせよ、「みんなが買うから」、「そういう年頃だから」といった、日本特有の集団が強制する空気に支配され、盲目的になっているのです。これらの現象はすべて「お金」についてあまりにも無知であることに起因しているのだと私は感じています。

支払いは一括で、収入は継続で

私は「お金持ちになる秘訣はなんですか?」と問われると、常々、「支払いは一括で、収入は継続で」と答えています。どういうことでしょうか。ひとつたとえ話をしましょう。
 とある山深い村での昔の話です。登場人物はBさんとCさんです。山での日々の生活には水が欠かせません。そこで、Bさんは、山の麓から毎日、バケツで水を汲んできます。そして、運んできた水を村人に売り、そのお金で優雅な生活を送っていました。
 逆にCさんは、日々の生活に必要なだけの水を確保すると、残りの時間で水路を拓くべく山と格闘する毎日です。しかし、容易に水路の開拓はできません。BさんはCさんに対して「そんなことをするより、毎日水を汲んで村人に売って、手っ取り早く金にすればいいのに」と言いました。しかし、Cさんは意に介しません。毎日毎日、土にまみれ、食うものも食わず、水路の開拓に励みます。
 時がたち、Bさんは身体を壊してしまい、バケツで水を汲む仕事ができなくなってしまいました。それまでの優雅な生活から一転、窮乏の日々に襲われたのです。その頃、Cさんはやっとのことで水路の開拓に成功しました。それは決してバケツでの水汲みほど多くはありませんが、確実に毎日、水を運んできてくれます。そして、その流れはずっと続くのです。Cさんは、その水を村人に売り、生活の安寧を手に入れました。まさに流れるようにお金が入ってくるようになったのです。
 バケツは一時的な収入、水路は継続的な収入です。人間は往々にして、目先の利益に目がくらみ、手っ取り早くバケツで水を汲んでしまいます。しかし、それではあまりにもリスクが大きいのです。

会社の明暗を分けた選択

このような考えに達したのには理由があります。それは現在の弊社の売り上げの根幹を成す会計システムの売り方から学んだのです。昭和48年に故郷、福島県いわき市に会計事務所を開業し、平成元年には会計事務所に特化したコンサルティングを主な事業とする株式会社エヌエムシイを東京に設立。そこで私は会計システムの開発に着手したのです。
 インターネットがない時代に、通信で会計事務所とお客様が繋がるという会計システムは日本初でした。そのため新聞、雑誌、テレビなど、様々なメディアで取り上げられ、ニュービジネス協議会より「ニューアイディア賞」を受賞。労せずにして、1台1000万円もするシステムが飛ぶように売れ、年間売上高も25億円を突破しました。
 当時、メインシステム本体の売上が1台あたり1000万円でした。また、メインシステムに繋がっている端末システムのサポートセンターを開設し、その利用料として月額1000円をいただいておりました。しかし、このサポートセンターの運営にコストがかかるため、とある会社に外注し、月額利用料金の1000円の権利ごと譲り渡す準備をしておりました。
 飛ぶように1000万円のシステムが売れるわけですから、月額利用料1000円のために、人手やコストをかけるのはもったいないと考えたわけです。ところが、サポートセンターのオープン前日に、私はこの案をひっくり返したのです。つまり、サポートセンターは自社で運営する、ということです。
 何故そんなことをしたのか。それは、身も蓋もない話ですが、やはり自社で作った製品のサポートは、たとえ採算があわなくても、お客様のために自社でやるべきだ、という考えからです。振り返ればこの時の選択が、のちの会社の明暗を分けた分岐点だったのです。

常に「お金」に対し学ぶ姿勢が肝要

その後、バブルの崩壊があり、24億もの借金を背負ったこともありましたが、開業以来、40年を経て弊社が存続しているのは、ひとえにこのサポートセンターによる月額利用料金の1000円によるのです。たとえ1000円でも、利用者が多ければ、やがて小川は大河となるのです。先ほどのたとえ話に置き換えれば、この1000円が水路の開拓であり、メインシステム本体の1000万円がバケツでの水汲みだったのです。
 しかし、ここまで計算していたわけではありません。正直な話、当時は1000万円のシステムが売れ続けるものだと錯覚してしまっていたのです。お金はどんどん入ってきましたが、それと同じように右から左へと使ってしまっていました。サポートセンターによる月額利用料金の1000円がなければ、今の弊社はなかったでしょう。そう考えるとゾッとします。
 経営者として「お金」と40年を超えて格闘してきましたが、このように「お金」というものは単純ではないのです。だからこそ、常にアンテナをはり、正しい知識、考え方、そして、お金の使い方、を学びとっていく姿勢が大切なのです。

税務総合戦略室便り 第50号(2013年10月01日発行分)に掲載

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