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成功者になるための法則 番外編2 
お金の上手な使い方

第51号(2013年11月01日発行分)
エヌエムシイ税理士法人 会長・税理士
野本 明伯

前号では、弊社に転職してきた元大手都銀出身のAさんが突然に失踪してしまったエピソードをもとに、「お金の怖さ」についてお伝えしました。AさんはFXや株の信用取引に手を出してしまい、住宅ローンの返済に行き詰まり、最終的には自己破産にまで追い詰められ、その中で突如、行方をくらませてしまったのです。
 前号は特に反響が大きく、様々な感想をいただきましたが、その中でひとつ引っかかる出来事がございました。とある金曜日の夜、いきつけの寿司屋で働いているS子さんと立ち話をした時のことです。S子さんは、二重瞼で意志の強そうな目をした笑顔の素敵な女性で、いつも本会報の感想を私に伝えてくれます。
 この日の帰り際も、S子さんは「お金って怖いですね。でも、私はFXも株もしないので大丈夫ですよ」と話しかけてきました。
 その時、私はそれは違うよと思い、3つの質問をしました。それは、「クレジットカードを使うか?」「マイカーを持っているか?」「マイホームが欲しいか?」というものでした。S子さんの答えは、すべて「はい」でした。それを聞いた私がしばらく黙っているのを見て、S子さんは「どうして、そんな質問をされるんですか?」と問い返してきました。
 私は言葉に詰まってしまいました。立ち話ついでに簡単に伝えられることではないからです。私は「じゃあ、次号の会報で書くから、それを読んでみて下さい」と伝えて、店を後にしました。以上の理由から本稿では前号から引き続き「お金の怖さ」を背景に、「お金の上手な使い方」に焦点を絞り、お伝えいたします。

身近にある「お金の怖さ」への入口

確かにAさんの転落の原因はFXや株であり、このような金融取引をしていない方にとっては、所詮他人ごとにしか映らないでしょう。しかし、「お金の怖さ」が潜んでいるのはFXや株の取引きに限らないのです。もっと言えば、現代の日本社会において、「お金の怖さ」へとつながる入口は誰にでもあるのです。
 それが、私がS子さんに質問した「クレジットカード」「マイカー」「マイホーム」という3つなのです。どれも社会人となり、仕事をしていれば、人生のシーンで関わってくる、いわば身近なキーワードです。

クレジットカードの魔力

まずはクレジットカード(以下、カードとします)についてですが、社会人であれば誰しもカードの1枚や2枚は持っているかと思います。事実、少し古いデータではありますが、2009年3月末の国内のカード発行枚数は3億1783万枚であり、成人人口比では1人当たり3.0枚所有(出典:日本クレジット産業協会)しています。
 もちろん私も持ってはいますが、カードを使うことは稀です。インターネット上での決済や海外出張の際など、どうしてもカードでなければ決済できないシーン以外、私は一切、使わないようにしています。それは、カードが持つ一種の魔力について知っているからなのです。
 人により見方は様々でしょうが、私はカードの本質は有体に言えば「お金を持っていなくても商品やサービスを購入することができる」ということだと思います。カード1枚で決済でき、支払いは翌月ないしは翌々月。分割払いもリボ払いもでき、さらにはポイントもつきます。一見すると便利なものですが、それによって失うものも多々あります。
 本来、お金というものは紙幣であり、硬貨であり、実体があるものです。そして、それを使うことは手間やストレスが生じるものなのです。銀行からお金を引き出すこと自体も手間ですが、それ以上に、実際に現金を手にして支払う際には、大げさに言えば、自分の一部が切り取られるような感覚をどこかしら抱くものなのです。だからこそ、目の前にあるお金を使う時には慎重にならざるを得ないのです。
 しかし、カードはこういったお金の実体、さらに言えば「お金の磁力」のようなものを失くしてしまう一種の魔力を持っているのです。したがって、本来持っているお金を使うことへの警戒心や躊躇がそぎ落とされ、ついつい必要以上にお金を使ってしまう、ということになりかねません。
 だからこそ私はカードを使わないのです。しかし、その普及枚数が象徴するように、多くの方が何の疑問もなく、カードで買い物をします。そして、「カード地獄」に陥ってしまう人も少なくありません。

お金持ちのカードへの向き合い方

カードにまつわる話でひとつ興味深いエピソードがあります。昨年、弊社に転職してきた大手百貨店のバイヤーだった才媛がいるのですが、彼女から聞いた話です。
 彼女が在籍していた百貨店では、上得意のお客様にはその百貨店が発行するカードで買い物をすると10%オフになるというサービスをしています。もちろん上位のお客様ですから、みな裕福な方です。
 しかし、多くのお客様が、カードで商品を購入されたその後に、現金にて決済をするのだそうです。通常は翌月か翌々月には指定の口座から引き落としが自動でなされるわけで、これこそがカードの利便性と言えます。にもかかわらず、わざわざサービスカウンターまで出向いて現金で決済をすると聞き、私はその理由を尋ねました。彼女曰く、10%割引のために仕方なくカードを使うが、支払った感覚を得るために決済は現金で行うという方が大半、とのことでした。
 やはり、お金を持っている人は、お金の使い方、付き合い方をわきまえているのだな、と私は合点がいったものです。それは、要するに「目の前にあるお金しか使わない」ということなのです。
 このように書くと、「それはお金持ちだからできるんですよ」という方がいらっしゃいます。実際に社員の何人かにもそのように言われました。しかし、違うのです。親がお金持ちで、産まれた時から裕福という方もいますが、稀です。ほとんどの方は、段々とお金を手にしていくものなのです。そしてそういう方は、お金のない時からずっとそのようにしてお金を使い、付き合ってきたのです。だからこそお金を持つようになったのです。

目の前にある現金の範囲内でやりくりする

マイカーの購入も同様です。仮に300万円の車が欲しい場合、余裕資金として現金で300万があるのなら購入してもよいと思います。しかし、ローンを組んでまで買うのは感心しません。仕事で使う車で、それにより収益を生み出すというのならば話は別ですが。
 しかし、家族サービスや自身の見栄や優越感を満たすために、ローンを組んでまで車を買うということは避けるべきだと思います。新車であっても購入した時点で中古扱いとなり、価値はどんどん下がっていきます。さらに、ガソリン、駐車場、車検、税金、保険、そしてローンの金利がのしかかり、かつ収益を生むことはないわけです。このように見ると、経済的にはものすごく損をしているのです。仮にマイカーが欲しいのであれば、目の前にある現金の範囲内でやりくりすべきなのです。
 マイホームも同様です。「自宅を持ちたい」という気持ちはわかります。しかし、月給が30万円でありながら、5、6千万円のローンを組み、さらに30年、中には50年にも及ぶ返済期間を設定する方がいます。不確実で不安定なこの時代に、30年後、50年後にローンを支払える給与を得ている保証がどこにあるのでしょうか。これはよくよく考えれば恐ろしいことです。
 しかし、現金で家を買う、という選択肢も現実的でありません。したがって、私はせめて半額くらいは現金を用意し、長くても10年くらいで返済できるようなプランを組めるのであればマイホームの購入もよいかと思います。
 ただ、逆にこのようなプランを組めないのであるならば、賃貸にすべきだと思います。そもそもマイホームを建てると自分の行動範囲、ひいては可能性を縛ってしまうリスクがあります。たとえば再就職でもマイホームが起点になってしまい、選択肢が限定されてしまうのです。賃貸であれば、仕事が変わった場合にもライフスタイルの変化にも柔軟に対応できます。
 私自身、長期的な借金を組んだことはほとんどありません。唯一、39歳の時、故郷いわき市に家を建てた時、住宅ローンを借りましたが、これも7年程度で完済しました。このように短期的に決着がつけられる範囲内の借金にとどめるべきだと私は感じています。

財布を3つに分ける

では、日々の生活の中でのお金の使い方はどうすべきか。ここでひとつ手軽に始められる実際的な提案をしたいと思います。それは、財布を「生活する財布」「貯める財布」「投資する財布」の3つに分けるということです。
 財布が一緒だと、何にいくら使っているのかがわからなくなりがちです。最初から3つに分け、その中から使っていくのです。その時に重要なのが、自分の器以上に、度を越えてお金を使っていないかを、常に念頭に置き計算することです。
 たとえば、300万円の年収で300万円の車を購入するのは果たして妥当か否か、やはり、「貯める財布」の中にある範疇の金額にとどめる、例えば80万円あるのならば中古の80万円の車を購入するのがよいのではないか……といった具合にです。
 しかし、実際に都度このような計算をするのは骨が折れます。したがって、繰り返しになりますが、「目の前にあるお金を使う」というルールを自分に課すべきなのです。つまり、それが成り立たないときは自分の器を超えている、と潔く諦めるのです。

教育に勝る投資はない

そして、「お金の使い方」において最も肝要なのが、リターンを生むものに投資をすることです。「マイカー」にせよ「マイホーム」にせよ、リターンを生むものではありません。そうではなく、資格をとるために学校に通うなど、いわゆる自己投資に励むべきなのです。お子さんのいる方は子供の教育にお金を投資することをおすすめします。教育は人間の可能性を広げ、人生を豊かにします。これこそ最高の投資です。
 子供をレジャーランドに連れて行くために車を買うくらいなら、教育に投資すべきなのです。そうすれば将来的に、有形、無形にせよ、必ずリターンが生じ、やがて大きな花が咲くことでしょう。
 私自身も大学卒業後、税理士試験の勉強をしていましたが、「早く稼がなければ」と焦り、試験勉強に身が入らない時がありました。その時、私に諭すように告げてくれた父の言葉が今でも私の大切な財産です。それは、「お金を稼ぐことを急ぐな。稼ぐ前にしっかりと勉強しろ。稼ぎ始めたらずっと稼ぎ続けないといけないのがお金だ」というものでした。
 父がこういった姿勢だったので、私は腰を据えて勉強することができ、今の自分があると思っています。そして、晴れて試験に合格し、28歳の時に会計事務所を開業、以来40年経営を続けています。この時の父の言葉、そして自己投資の時間がなければ、今の私はないのです。

花は未来に咲く

最後になりますが、時間は貴重な財産です。S子さんはじめ若い方は、まずは財布を「生活する財布」「貯める財布」「投資する財布」の3つに分け、お金の使い方を身体に覚えこませて下さい。
 その上で、10年後、20年後の自分のために、できうる限り、自己を高めるためにお金を使ってください。やがて年齢を重ねるにしたがい、お金の上手な使い方がしっかりと自分のものとして身についてくるでしょう。そして、お金も増え始め、あなたは大胆にお金を使うことができているはずです。今は見えなくとも、きっと大輪の花が咲くことでしょう。

多い方だと、十数枚のクレジットカードをお持ちの方もいるようです

税務総合戦略室便り 第51号(2013年11月01日発行分)に掲載

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