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高付加価値機能の海外移転を考える

第51号(2013年11月01日発行分)

執筆者3

日本の復活

円高と高い法人税率が企業収益にとっての重みだと言われて久しかったが、アベノミクスの効果もあって、今では、1ドル約100円の円安となっている。
1ドル120円とまではいかなくても、もう10円円安になれば、リーマンショック以来の円高がリバースされ、日本企業の国際競争力は格段に改善される。そして、シャープも確実に立ち直れる。
 安倍政権の三本の矢に続く、第4の矢ともいわれている2020年TOKYOオリンピックの開催決定。これを受けて、建設関連企業の株価は既に上がっている。続く第5の矢として(?)法人税率の引き下げがなされれば、本当に企業収益は改善するのだろうか? 国内経済は活性化するのだろうか?そして、企業の〝生産や販売の現地化〟にともなう高付加価値機能の海外移転(日本国や国民にとっての富の流出となる)の流れに竿を指すことは本当にできるのだろうか?

 

円高への対応(長いトンネル)

日本企業は長い間続いた超円高という逆境の中、国際的な価格競争力を損なってしまい、国内のガラパゴス化などと揶揄されながらも必死で耐えてきた。また、国内消費の低迷にも見舞われた。
 このような企業を取り巻く環境の悪化に抗して、さらなる成長を目指すため、生き残るために、企業は生産・販売の現地化やドル建て取引の増加といった地道な対策を推し進めることで、海外での価格競争力を維持することに努めてきた。
 税制もこれを後押ししていたと言える。外国子会社からの配当金益金不算入制度を導入し、手許資金を日本に戻しやすくしたり、タックスヘイブン税制を緩和したりした。

現地化の推進と円高

そもそも、生産・販売の現地(法人)化=企業の日本脱出には大きなメリットがある。
 まず売上から見てみると、海外売り上げが多いほど、日本には開発・製造・販売機能といった事業活動の中心部分ばかりか、その統括機能や本社機能すらも置く必要は少なくなる。現地化によって、企業にとっての経営の効率・スピード感の改善が期待される。
 次に、コストの観点で見ると、日本に事業活動の中心機能や本社の機能を置いたままにするよりも、その拠点である現地=海外に移転した方が、コストは安くなる。ここでいうコストには、最近、企業の注目を集め始めている税務コスト(日本の税率は高い)も含まれ、現地化へのインセンティブは大きい。
 一方、円高は機能を海外に移転しようとしている企業にとって初期投資のコスト低下を意味しており、海外での事業展開や企業買収を通じた企業の中核的な機能の海外移転を後押ししてきたと言える。
 しかしながら、海外の低税率国(シンガポールなど)に企業活動の機能を移転するほど、その国に帰属する所得が増え、日本に帰属する所得は減少し、税収も減少してしまう。

税務当局の対応

これに対し、税務当局も手を拱いていたわけではなかった。
 外資系企業を含めた企業の国際的な機能移転に伴う所得移転に対して、税務当局は国際課税ルールである「独立企業原則」に基づいた移転価格課税やPE認定課税をおこない、機能移転により発生した配分結果の不公正さに対処してきた。しかしながら、アドビ事案やTDK事案のように、裁判や裁決において、必ずしも税務当局の考え方が認められているわけではない。
 このような場面において問題とされた、配分の対象とされた企業グループの持つ〝超過収益力〟の源泉は、主として特許や商標などユニークな無形資産等にあるとされている。しかしながら、無形資産等には第三者間の取引市場などはない=独立企業間価格は見当たらない。そして、その価値や価格をどのように測定するのかといった、国際的なルールも現在のところない。ルール作りは現在進行形ナノダ。
 このため、海外展開をおこなう企業にとって「独立企業原則」に基づく適正な利益(所得)配分の決定には困難が伴う。海外展開に伴う高付加価値機能の移転にあたっては、課税リスクを回避するためにも、その結果の利益配分に注意したいものだ。

税務総合戦略室便り 第51号(2013年11月01日発行分)に掲載

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