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元国税調査官が語る国際税務解説 第二十二回 
海外移住後の日本における不動産所得

category: 国際税務
第51号(2013年11月01日発行分)

その他

1 非居住者が保有する日本の不動産

先日、このようなご相談がありました。
「今年の秋からマレーシアに移住を予定しているが、日本に不動産の賃貸物件を数棟保有しており、移住後も日本での不動産収入が生じるため、日本での確定申告が必要となるのか。または、日本の非居住者ということであれば、日本での申告は不要になるのか」という内容でした。
 この方がマレーシアに移住することにより、マレーシアでは居住者、日本では非居住者に該当する場合を想定して解説します。
 まず、マレーシアでの課税関係ですが、マレーシアは国外所得免除方式を採用しており、マレーシア国内で発生した所得のみに課税されるため、日本で発生した不動産所得については、マレーシアに送金しない限り、原則、課税されません。
 マレーシアや香港は国外所得免除方式を採用しており、日本を含む大部分の国で採用している全世界所得課税とは大きく異なります。
 一方、日本での課税関係ですが、不動産所得については、全世界的な考え方として不動産の所在地国にも課税権を与えているため、マレーシアの居住者(日本の非居住者)であっても不動産が所在する日本で確定申告を行う必要があります。また、日本のテナントが当該マレーシア居住者に賃借料を支払う際には、原則、源泉徴収義務が課されており、マレーシア居住者は当該源泉徴収された金額を確定申告で精算することになります(日本のテナントが、個人で、かつ自らや親族の居住用のために使用している場合は源泉徴収の必要はありません)。
 今回のケースでは、日本のテナントが個人であり、源泉徴収事務に慣れておらず、源泉徴収に難色を示したため、何か良い方法はありませんかという相談もありました。
 そこで、不動産管理会社を経由して賃貸することをお勧めしました。これは、日本のテナントと管理会社、管理会社とマレーシア居住者という二つの契約形態を作り、サブリースの形にすることによって、日本のテナントは国内の管理会社へ賃借料を支払うことになるため、源泉徴収事務が生じません。源泉徴収は、実際マレーシア居住者へ賃借料の支払いをする管理会社が行うことになります。

2 国外送金のお尋ね

今回のお客様のもう一つのご相談内容は「国外送金のお尋ね」についてでした。
 マレーシアのビザ取得のために現地の銀行に預金をする必要があり、まとまった金額を日本から送金していたため、税務署から、「国外送金のお尋ね」の文書が届いていたのです。
 金融機関は、税務署に対して国外送金調書の提出義務があるため、100万円超の国外送受金については、税務当局はすべて把握しています。そのため、国外送受金の額が多額な者に対して「国外送金のお尋ね」という文書を送付することがあります。
 話をお伺いしたところ、当該送金分は定期預金となっていたため、前年度に少額ですが海外口座に利息の入金がありました。
 給与収入のみの方の場合、利子の額が年間20万円以下であれば確定申告の必要はありませんが、このお客様は、前年度、株式の譲渡所得の申告をしており、原則、利子所得についても申告する必要があったため、所得税の修正申告を提出することになりました。
 このお客様のように、海外の銀行に口座を保有している方ですと、本人の知らぬ間に利息が入金されているというケースはよくありますので、注意する必要があります。
 最近は特に、「国外送金に関するお尋ね」による書面確認や、国外財産に対する個人への調査が増加しているように感じられます。今年の12月31日保有分から国外財産調書報告制度が始まることもあり、税務当局の国外財産に対するチェックは今後も厳しくなるでしょう。
 ちなみに、国外財産調書報告制度は、日本の非居住者の方につきましては提出義務がありません。

税務総合戦略室便り 第51号(2013年11月01日発行分)に掲載

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