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元国税調査官が語る国際税務解説 第二十三回 
マークアップ法人について

第52号(2014年01月01日発行分)

その他

1 マークアップ法人とは

皆さんは、「マークアップ法人」という言葉をきいたことがあるでしょうか。「コストアップ法人」という場合もあります。
 これは、外資系法人の日本拠点となる子会社が「販売費及び一般管理費」に一定の率を乗じて、当該子会社の収益を算定している場合のその法人のことをいいます。したがって、マークアップ法人は、営業損益ベースでは必ず利益が生ずることになります。
 たとえば、一定の率が5%の場合は「105%マークアップ法人」、率が10%の場合は「110%マークアップ法人」等といいます。法人によってマークアップ率は異なりますが、私の過去の経験では、105%のマークアップで日本拠点の収益を計上しているケースが一番多いのではないかと思います。
 これら子会社は内国法人となりますので、日本で法人税の申告を行う必要がありますが、その際の申告所得もマークアップ率から導き出された利益を基に算定しています。

2 特徴

なぜこのような大雑把な計算方法が容認されているのでしょうか?
 これは、日本拠点の利益の算定方法が困難であることに起因しています。日本拠点の業務がモノの売買等であれば、売上から仕入を控除した金額を利益として計上することになるため、利益の算定方法は簡単ですが、マークアップ法人は一般的に海外の親会社のための単純な補助やサポート業務を行っていることが多く、日本拠点の適正な利益を計算することが困難となる傾向があるため、簡便的に販管費に一定の率を乗じて利益を計算しているのです。
 では、5%や10%のマークアップ率に根拠はあるのでしょうか? 通常、こうした取引については、業務契約書が作成されており、当該契約書にマークアップ率についての記載はありますが、率自体には正当な根拠がない場合がほとんどです。大部分の法人が「他の外資系法人もこのくらいの率でやっているから、当社も同様に……」というのが実情です。
 また、これまで税務調査で指摘されるケースも少なかったため、外資系法人の中で慣例化してしまい、現在に至っているという状況です。

3 問題点

そもそもマークアップを適用している法人は、上述したように、親会社のための単純な業務を行っていることが多く、日本拠点としての機能が低いケースがほとんどです。したがって、税務当局も、時間をかけて調査をしても所得が増加するとは限らないため、税務調査においても、マークアップ法人については深く追及してこなかったという実態もあります。
 一方、日本拠点が稼得する利益について、正確な計算を行うとするならば、親会社と子会社の取引なので移転価格の問題が生ずるため、日本拠点の機能やリスクを勘案し、日本拠点の適正な利益を算定する必要があります。
 しかし、移転価格における独立企業間価格の算定は困難であり、時間もかかるため、税務当局は積極的に指摘しない傾向にあります。モノの本によっては、「税務当局もマークアップ法人を慣例的に認めている」といった記述さえあります。
 また、上述したように、マークアップ法人は営業損益ベースで必ず利益が生じ、一般的に税額も発生するため、税務当局も黙認してきた側面もあると思います。

4 まとめ

マークアップによる収益計上は法令や通達で認められているわけではありません。あくまでも親子会社間の利益の配分の問題なので、移転価格的手法での収益計上を行う必要があります。たとえ契約書にマークアップ率を記載したからといっても、それが税務上認められるわけではありません(ただし、移転価格的手法でマークアップ率を算定し、その率が適正であれば、マークアップでの収益計上は当然認められるでしょう)。
 したがって、調査により、日本拠点の機能が高いと認定された場合には、マークアップ率の訂正を求められることもあるでしょう。

税務総合戦略室便り 第52号(2014年01月01日発行分)に掲載

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