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自社株対策とは何か(後編VIII)

category: 自社株
第53号(2014年02月01日発行分)

執筆者11

6 自社株式の売買による問題と対策

(1)社員個人、取引先等が所有する株式の買い取り問題

①低い株価で買い取るケース

イ.自己株式としての買取価額
 社員個人(亡くなった場合は、通常、配偶者や子の相続人が所有している)、取引先等は同族株主以外の少数株主になっていると考えられますから、第三者との売買であり、買取価額についてはその株主との交渉により決められることになります。
 自己株式(自己株式の取得方法等については後述)で株式を発行する会社が買い取る売買については、税務上は「時価」での売買価額とされています。  したがって、原則的には株式の発行会社である同族会社が時価よりも低い価額で譲り受けた場合には、「みなし時価譲渡」となり、時価で売買したものとみなされます。
 しかし、現在の税務上の取り扱いは、一つの取引に二つの価格を認める「一物ニ価」の考え方をとっています。つまり、所得税法では譲渡人である社員等の立場で適用されますから、同族会社以外の少数株主として、「時価」は「配当還元価額」ということになります。
 一方で、譲受人である同族会社の立場で適用されますから、「時価」での譲受価額でなければならないということです。
 したがって、株式の発行会社が自己株式として買い取る場合は時価の算定が必ず必要になります。しかしながら、株式の発行法人の側は、自己株式の取得は資本取引となるため、時価よりも低い価額で買い取っても、買取価額と時価の差額に対する受贈益としての課税は行われません。
 例えば、1株あたりの時価10000円の株式を500円で引き取ったとしても、株式の発行法人としては受贈益課税はありません。また、売却する側(社員、取引先等)の少数株主の価額(時価)は500円であれば売主側にも課税はありません。
 このように、自己株式で買い取るときの両者の時価は相違します。したがって、低い株価で株式を買い取る場合は自己株式として取得しなければなりません。

ロ.別法人の買取価額と課税
 社員個人、取引先から株式の発行会社以外の法人(持株会社等)が買い取る場合は、自己株式で買い取る場合と違い、時価よりも低い価額で売買しますと、譲受会社に対しては、買取価額と時価との差額について受贈益として法人税が課税されます。
 一方、譲渡人に対しては、みなし時価譲渡として、譲渡価額と時価との差額に関して譲渡収入として所得税等が課税される可能性が理論的にはあります。
 しかし、譲渡する株主が社員等のような少数株主であれば、配当還元価額で売却しても少数株主の時価はあくまで配当還元価額ですから、時価で売却したことになり、現在の税務行政上においてはみなし課税として課税は行われていません。
 これもまた、「一物ニ価」の考え方を取り入れているものと考えられます。

ハ.譲渡する株主が同族関係株主の場合
 低い価額で譲渡する株主が同族関係株主に該当していますと、同族関係株主に対する時価は「配当還元価額」ではありませんから、みなし時価譲渡課税が行われることになります。
 自己株式として低い価額で譲渡しますと、譲受側の株式発行法人に対しては、先述の通り、資本取引として譲受価額と時価との差額に対する受贈益課税は原則としてありません。
 原則としているのは、自己株式の売買価額を時価よりも低額にしたことが、何らかの「利益移転」を目的とした損益取引と資本等取引とを抱き合わせにした結果であると認められる場合には、売買価額を時価に引き直したところにより課税関係が整理され、課税するとされているからです。
 したがって、同族関係株主より低い株価で発行会社が買い取る場合には、この通達外の考え方に留意する必要があります。
 一方、譲渡人側の同族関係株主は、全て時価で譲渡したものとするみなし時価譲渡課税となり、所得税等が課税されます。
 また、譲り受ける法人が株式の発行会社以外の法人(持株会社など)である場合は、譲受法人には受贈益として法人税課税が行われ、譲渡人の同族関係株式会社には、みなし時価譲渡課税として所得税等の課税が行われることになります。

税務総合戦略室便り 第53号(2014年02月01日発行分)に掲載

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