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元国税調査官が語る国際税務解説 第二十四回 
海外出向者に対するが税関係

第53号(2014年02月01日発行分)

その他

1 海外出向者に対する給与

近年、中小企業であっても、海外に進出することが当たり前の時代になっています。これに伴い、日本法人が海外に子会社を設立することにより、日本親会社から海外子会社への出向等による人的移動も増加しています。
 このような場合、日本で勤務していた従業員や役員の出向前後の給与に関する所得税の考え方や源泉徴収・年末調整等の実務はどのようになるのでしょうか。
 これらの事項を検討する際に最も重要となるポイントは、出向者の出向期間が1年未満となるのか、または1年以上になるのかということです。これは、出向者が税務上の居住者に該当するのかまたは非居住者に該当するのかにより、課税関係が異なってくるためです。
 居住者と非居住者の判定をする際には、日本の税務上、推定規定があり、本規定では「国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有している者は非居住者と推定する」としています。つまり、日本親会社の従業員や役員が、出向命令を受け、1年以上海外子会社に出向するような場合は、出国日の翌日から、税務上非居住者として取り扱われることになります。

2 出向後も、居住者に該当する場合

出向者が居住者に該当する場合(海外勤務期間が1年未満の予定の場合)、日本の税務上、全世界所得課税により所得を算定することになります。したがって、海外子会社出向後の給与収入も、海外勤務にかかるものではありますが、日本の所得税の課税対象となります。
 この場合、海外子会社が給与分の負担をし、日本親会社が給与を支給する場合は、出国前と同様、親会社で源泉徴収と年末調整を行う必要があります。
 出向後、海外子会社が給与を直接支給するという前提であれば、海外子会社は日本に拠点を有さず、源泉徴収義務者に該当しないため、海外子会社での源泉徴収は不要です。ただし、出向者は翌年、海外勤務分の給与を含めて日本で確定申告を行う必要があります。

3 出向後、非居住者に該当する場合

出向者が非居住者に該当する場合(海外勤務期間が1年以上の予定の場合)、日本の税務上、国内源泉所得のみに課税されることになります。したがって、海外子会社出向後の給与は、国外勤務に係るものであり、国外源泉所得に該当するため、所得税の課税対象には該当しません。
 しかし、出向者に出国後に支払われるものであっても、賞与のうち国内勤務に対応する期間の所得は国内源泉所得に該当します。この場合、国内親会社は、非居住者への支払いとして20・42%の源泉徴収を行い、出向者側は、源泉分離で課税関係が終了することになります。

4 国内親会社の役員が海外子会社に出向した場合

国内親会社の役員が、海外子会社に出向し、出国後も国内親会社の役員となっているケースもあると思います。国内親会社の役員が1年以上海外子会社への勤務となった場合、出国後は非居住者に該当することは従業員のケースと同様です。
 役員が非居住者として出国し、海外子会社に勤務する場合、勤務地は国外となるため、従業員同様、出国後は日本での課税関係は生じないと考える方もいらっしゃるかと思います。
 しかし、役員の場合、日本の国内法では原則給与を支給する法人の所在地国で課税できることになっており、上記のケースでは日本で課税されることになります。

5 まとめ

上記の事例は国内法を基に検討しましたが、国内源泉所得に該当するかどうかの判定は、租税条約の内容によって異なりますので、注意する必要があります。
 さらに、出向者については現地での課税関係を確認する必要があります。居住者の定義や課税方法については各国で異なるため、二重課税が生ずるケースもあり、問題がより複雑になります。

税務総合戦略室便り 第53号(2014年02月01日発行分)に掲載

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