内国法人の場合、当然ですが、原則として日本で法人税や消費税の申告を行う必要があります。では、外国法人の場合、日本で法人税や消費税の申告をしなければならないケースというのはあるのでしょうか。外国法人の納税義務者の考え方は、法人税と消費税では考え方が異なりますので、以下、解説したいと思います。
税務上の外国法人とは、一般的に海外で設立された法人およびこれら法人の日本支店のことをいいます。
外国法人が、事業の所得について日本で法人税の申告をしなければならないケースは、外国法人が日本に恒久的施設(以下PE)を有する場合というのが原則的な考え方です。
PEとは日本における拠点のことをいい、一般的に支店や事務所、工場などに当たります。つまり、これらの施設を有し、その国で事業を行っているならば、内国法人と同様の取り扱いとなっていなければ平等性の点から問題があるためであると考えられます。しかし、一定の拠点であっても準備的補助的業務しか行っていない駐在員事務所のような場所は、機能が低いものとしてPEに該当しないことになります。
したがって、PEの該当性については判断が難しい場合があり、納税者と税務当局で意見が分かれるケースもあります。
また、外国法人が日本にPEを有しない場合であっても、日本で申告しなければならないケースもあります。外国法人が日本に不動産を有し、その不動産から賃料収入やキャピタルゲインが生じた場合です。これは、全世界的な考え方として、不動産から生ずる収入については不動産が所在している国に課税権を与えているためです。
外国法人の消費税の納税義務についてはPEの有無は関係ありません。内国法人と考え方は同様となりますので、基準期間または特定期間の課税売上高が1000万円を超える場合は納税義務者となります。
つまり、日本に支店等の拠点を有しない外国法人であっても、以下のようなケースでは日本での消費税の申告義務が生ずるケースがあります。
一つ目は、日本に拠点を有しない外国法人が、日本国内に商業用ビル等を有し、賃料収入がある場合です。事務所用の賃料収入は課税対象に該当しますので、消費税の申告義務が生じます。
次に、芸能人やプロスポーツ選手等の個人会社です。日本でコンサートや試合、CM撮影等を行った場合、これらの取引は課税対象に該当しますので、納税義務者に該当するケースがあります。
以前、マスコミ報道されましたが、某プロゴルファーが、日本ツアーでの賞金について消費税の申告をしていなかったというケースが報道されました。これは、海外の芸能人やプロスポーツ選手によくある話ですが、日本に毎年来日しているわけではないので、基準期間(2年前)の課税売上高が1000万円を超えるのかどうかについての確認を失念しているケースがあるためだと思われます。
一方、消費税の申告については、日本に拠点を有さず、国内で売上が生じない外国法人であっても還付申告できるケースがあります。
たとえば、日本に拠点を有しない外国法人の従業員が日本に会議や営業のために来日することがあると思いますが、その際日本で生じた旅費や宿泊費日当等について還付申告することができるのです。日本国内で生じた課税売上がないため、控除対象に該当しないものと勘違いしている方も多いのですが、消費税基本通達11-2-3により還付申告は可能となります。
ただし、これらの外国法人は、基準期間や特定期間の課税売上高が1000万円以下であると考えられるため、還付の申告書を提出する場合は「課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。
また、日本に拠点がありませんので、関連会社や関与税理士に納税管理人になってもらう必要があるでしょう。
税務総合戦略室便り 第54号(2014年04月01日発行分)に掲載
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