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元国税調査官が語る国際税務解説 第二十七回 
事業体課税

category: 法人税
第56号(2014年06月01日発行分)

その他

1 様々な事業体

海外には、日本では馴染みのない様々な事業体があります。パートナーシップやLLCと言われるものがそれらの代表ですが、皆さんも聞いたことがあるかもしれません。
 これらの事業体は「パススルー」という特徴を有しており、事業体自身は納税主体とはならず、事業体に出資を行う構成員に、事業から生ずる収益や費用が直接帰属することになります。
 日本にも、任意組合や投資事業有限責任組合といわれるパススルーの事業体もありますが、現状ではメジャーな存在とはいえません。また、米国の場合、上記事業体は「パススルー課税」と「事業体課税」を選択することができますが、日本の場合、選択することはできません。

2 パススルーのメリット

パススルーの事業体は、事業体自身は納税主体にならず、税金を支払う必要がないため、組合員に帰属する利益が大きくなるという特徴があります。株式会社に出資した場合と比較すると分かると思いますが、株式会社の場合は法人税差引後の利益から出資者に配当されるため、上記パススルーの事業体に較べ、出資者の手取り額が減少することになります。
 パススルーのメリットとしてもう一つあげられるのは、事業体で行う事業について損失が生じた場合、組合員は当該損失を取り込めるということです。特に不動産投資においては、投資初期に減価償却費や借入利息の計上により大きな損失が見込めますので、他の所得と通算することにより節税効果をあげることができます。

3 法人格の有無

では、日本に存在しない外国のパートナーシップやLLCに日本の居住者が投資した場合、課税関係はどのようになるのでしょうか。これらの事業体が現地の取り扱いと同様に日本でもパススルー課税を適用することができるのであれば、事業に係る損失を取り込めることになりますが、法人格を有する納税主体と認識された場合には、構成員にとっては配当請求権を有するだけなので、損失を取り込むことができません。
 つまり、パートナーシップやLLCが日本から見て法人格を有するか否かの点は重要なポイントとなりますが、過去の判例では意見が分かれています。
 判例では、事業体が構成員の個人財産とは区別された独自の財産を有するか、独立した権利義務の帰属主体となり得るのか、訴訟の当事者となり得るのか等を基準として、日本の租税法上「法人」に該当するのかどうかを判断要素として示しているケース等があります。
 ちなみに、米国のLLCの法人該当性については、国税庁質疑において、日本の税務上、原則として法人として取り扱うこととしながらも、各国の設立準拠法の規定に照らして個別に判断するということになっています。

4 税制改正

パススルーの事業体については、上述したような損失を取り込めるというメリットを利用した租税回避行為が横行したため、平成17年の税制改正で新たに次の規定が導入されました。
 個人が不動産にパススルー事業体を通じて投資した場合の所得税の計算については、不動産に係る損失はないものとして取り扱われることになりました。
 また、法人がパススルー事業体を通じて投資した場合も、法人税の計算上、事業損失は投資額を基準として算定された一定の限度額までしか損金算入が認められないこととなりました。
 これにより、個人で行うパススルー事業体を通じた不動産投資は節税メリットを享受できないこととなり、法人としての投資も、以前ほどは税効果を高められなくなりました。
 したがって、パススルーの事業体に投資する場合は、上記メリットやデメリットを検討した上で慎重に検討する必要があるでしょう。

税務総合戦略室便り 第56号(2014年06月01日発行分)に掲載

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