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元国税調査官のひとりごと 第1回 
国税組織の内情

category: 税務署
第57号(2014年08月01日発行分)

伊藤 徹也

私が国税局に入局したのは30年前のことです。今まで国税当局にいて感じていたことを、書きたいと思います。

国税当局の職場では、「職員の調査能力が年々落ちている」と言われて久しく、思い返すと、ここ10年ほど特によく耳にしてきました。
 自分が職場に入った頃は、調査手法は自分で確立するものだと教えられました。暇さえあれば簿書庫に入り、先輩たちが過去にやってきた調査の調書や、過去の顕著な事例のダイジェスト版、マニュアル本等を読み漁りました。

調査指令を受けた会社に対しては、休みの日に必ず見に行き、普段街に出て気になった会社やお店のことを資料として月に100枚くらいは作成していました。また、調査先で恥をかかないように、新聞や雑誌を斜め読みして情報を蓄積しました。当時の同僚は、みなやっていたことです。
 先輩の中には、「在庫の○○」「料飲の○○」など、勘定科目や業種の代名詞のように呼ばれる、いわゆる「職人」がたくさんいました。この人達は、周りと差別化するために自己研鑽を積み重ねていたのだと思います。若手職員数人が集まって、そういった先輩に、夜遅くまで職場で非公式の研修をしてもらったりもしました。

今も、自己研鑽に励んでいる職員は多くいますが、残業時間の管理、書類や情報流出のリスク回避、個人情報の保護などにより、職場では早く帰れと言われ、自宅で勉強しようにも、書類や情報の持ち出しはダメ、簿書庫で自分の調査予定でない会社の資料を読むのもNG……。今は、KSKシステム、インターネットなどにより、情報が簡単に手に入る環境にありますが、調査手続きの複雑化で部内作成資料も増えて、そんな暇もないのが実情です。

日中の事務に追われて、調査能力の自己研鑽なんて二の次。個人的な感想ですが、調査にかかわっている時間は20年前の二分の一? いや三分の一くらい?
 調査能力が落ちて当たり前ですよね。
 その辺の対策は、国税当局ももちろん考えています。調査件数を減らし、一件の調査に参加する人数を増やして、必要度の高いところを調査する。いわゆる「数の暴力」に訴える傾向にあります。一人の司令塔のもとに何人もぶら下がってやってくるのです。

大勢で来たときはよく見ていてください。5分もすれば、誰と誰が能力が高いかなどすぐにわかります。調査に際し、上手に対応するためにこの見極めは非常に大切になってきます。「あるものを見る調査官」と「あるべきものを探す調査官」では、対応の難しさが全然違うのです。
 前者の調査官が来たときは指摘事項を聞いてからでも対応できますが、後者の調査官が来たときには注意が必要です。彼らは概況聴取や雑談の中に、「普通」と違う何かを探しています。イレギュラーな話には何らかの事情があり、その背景に色々な想像ができます。

違和感に感づくと、調査官からの質問攻めが始まります。こちらの説明にもすぐには納得せず、自分の想像を修正しながら想定に変えていき、確証に変えていくために必要な調査展開を考え、実行してきます。
 ここまで来ると、解明するまで反面調査や銀行調査を繰り返すため、容易に止めることができなくなってしまいます。そうなる前に、「ああそうか」となるような説明でテンションを下げてしまうことが効果的です。そのためには、事前に自分の会社のどこに税務リスクがあるか、そのリスクをクリアするためにどんな準備が必要か等、対策を立てておくことが重要になってくるのです。

それにつけても、大勢の調査官が調査に来ると、時間的にも精神的にも対応が大変ですよね。立場が変わると、大変さがよく見えてきます。
 税務調査を知り尽くしている私たちが会社と税務当局の間に入ることで、少しでも楽になっていただけるのであれば、そんなにうれしいことはありません。ぜひ、私どもを便利に使っていただきたいと思います。
 国税局の頃は、仕事をすればするほどお客様から嫌われてきましたから、仕事をするたびに喜んでいただけることにこの上ない喜びを感じます。日々自己研鑽に努めてまいりたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

税務総合戦略室便り 第57号(2014年08月01日発行分)に掲載

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