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元国税調査官が語る国際税務解説 第二十八回 
世界各国の法人税率

第57号(2014年08月01日発行分)

その他

1 法人税率の引き下げ

最近、法人税率引き下げについての議論がマスコミを賑わしています。安倍首相は骨太の方針の一環として、国際競争力の観点を考慮し、最終的に20%台を目標に強く法人税減税を推し進めていく模様です。
 確かに、日本の法人税率は、復興増税分が減少したとはいえ、現状、地方税も含んだ実効税率は約36%であり、アメリカと並び高税率国の一つに挙げられています。
 例えば、アジア地域を見てみると、中国25%、韓国24%、香港16・5%、シンガポール17%となっており、日本の税率の半分以下の国もあります。
 特に最近は、グーグル、アマゾン、スターバックス等の国際的な大企業が、アイルランドやオランダ等の低税率国を利用してタックスプランニングを構築し、グループ全体の税コストを最少化しているという話題が挙げられこともあります。
 一方、日本においても中小企業の海外進出が当たり前の時代となり、香港やシンガポール等の低税率国を利用し、戦略的な税務対策を行っている法人も多く見受けられます。しかし、低税率国に子会社を設立したとしても、日本には、タックスヘイブン対策税制や移転価格税制等がありますので、これらを考慮した上での戦略的なスキームが必要になります。

2 タックスヘイブン 対策税制と法人税率

タックスヘイブン対策税制とは、低税率国に子会社を設立し、利益を留保することによる租税回避を防止するための規定ですが、現在、本制度の低税率国の基準は、その国の税負担率が20%以下の国となっています。したがって、現状では香港やシンガポール等に法人を設立する場合、同税制を考慮した上での海外進出が必要となります。
 現在、世界的な流れとして法人税率を下げる傾向があり、イギリスも今後は法人税率を20%に下げることになっています。したがって、これまでタックスヘイブン国というと、香港やシンガポール、ケイマン等のオフショア地域をイメージしてきましたが、今後はイギリスもタックスヘイブン対策税制の対象国に該当する可能性が高くなり、低税率国の基準となる現状の税負担率(20%)を下げるべきであるという議論も見受けられます。

3 各国の税制

海外には様々な税制を採用している国があり、例えば、ガーンジーという地域は法人自らが税率を選択することができるという特殊な制度となっているため、納める税金を自身で決めることができます。したがって、日本法人がガーンジーに子会社を設立する場合、タックスヘイブン対策税制の網にかからないギリギリの税率を選択することによって、税コストの削減を図ることが以前は可能でした。しかし、このスキームついては税務訴訟等もあり、現在は、税制が改正されています。
 また、オセアニアのミクロネシアという国では、法人税率を21%としており、さらに、税体系も日本の税制に近いものとしているようです。これは、日本のタックスヘイブン対策税制を回避でき、税制も日本と類似しているということを強調し、日本からの投資を呼び込もうとしているためと言われています。
 日本国内でも、国家戦略特区に指定された福岡県は、法人税の実効税率を設立から5年に限り15%程度に引き下げる方針を明らかにし、地方からの新たな動きも見受けられます。

4 今後の方向性

日本の法人税率は他国に比較して高いため、これまで、日本企業は税コストの削減を目的として拠点を海外に移転する傾向があり、逆に、外資系法人は進出先国として日本を見送ることもあったといわれています。このような状況は産業の空洞化を招き、雇用や景気に直接影響を及ぼすことになるでしょう。
 法人税率を上げ、税収を確保するのか、または、法人税率を下げて日本に投資を呼び込むことで経済を活性化させるのか、そのバランスが難しいところではありますが、安倍首相には今後の日本を見据えた最良の方向性を示してもらいたいものです。

税務総合戦略室便り 第57号(2014年08月01日発行分)に掲載

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